人間感情を突き抜けた宇宙の鳴動

僕のクラシック音楽遍歴の始まりはフレデリック・ショパンその人だが、かの世界の大きな波に飲み込まれた最初は、朝比奈先生のブルックナー演奏だった。1980年、大阪フェスティバルホールでの第7交響曲。背筋が凍りつくくらい本当に衝撃だった。
爾来、ブルックナーの音楽は生涯の友となった。今でこそ実演に触れることも少なく、頻繁に音盤を取り出すこともなくなったが、それでも時折ブルックナーの祈りの世界に身を沈めたくなる。

最近はクラシック音楽のコンサートで昭和女子大学人見記念講堂は使われなくなった。25年前、サントリーホールがオープンするかしないかの頃はこのホールで外国アーティストの壮絶な演奏が懲り広げられた。僕が接しただけでもカルロス・クライバー、オイゲン・ヨッフムなど昔懐かしい面々の超絶名演奏が思い出される。

オイゲン・ヨッフムもカール・ベーム同様実演の人である。それは、ドレスデン・シュターツカペレと録音した新ブルックナー全集の演奏と最晩年の東京公演の録音を聴き比べてみて一聴瞭然!

ブルックナー:交響曲第7番ホ長調
モーツァルト:交響曲第33番変ロ長調K.319
オイゲン・ヨッフム指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(1986.9.17Live)

悠然とした足並みの中に真実の音が爪弾かれる。老巨匠でなければ成し遂げられないであろう至高の境地。第2楽章のクライマックスで打楽器が打ち鳴らされるという事実のみが受け入れ難いが(苦笑)、それ以外は完璧な造形美。

何事も「真実」を経験することが重要。
あらゆる人間感情を突き抜けて宇宙の鳴動がこの中に存在する。

それにしても終演後の拍手が早すぎる(怒)。いわゆるクラヲタたちは余韻を楽しむということを知らないのか・・・。特にこの時のヨッフムの凄演は、2000年11月のギュンター・ヴァントの最後の来日公演に匹敵するのにもかかわらず。

※今朝、合気道の朝練見学に行った。合気道とはすなわち「和の武道」なのだと。勝ち負けのない、試合のない武道があることを初めて知った。
真面目に習おうと考えている。


コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む