Miles Davis “Decoy” (1984)を聴いて思ふ

miles_davis_decoy411人が人を触発し、人が人に感応されて新しいものが創造される。そして、その創造物は得てしてその時代には受け容れられず、何十年も経過した後ようやく大衆に馴染むようになる。
創造者は孤独だ。

“Decoy”。
晦日のマイルス。
ことごとく敵を欺くマイルス。
聴衆を常に煙に巻くことが彼の革新の方法。ミュートを効かせたトランペットの哀愁。
あるいは、わずか1分超の”Robot 415”。
ミュータント、マイルスの前奏曲。
そして、”Code M.D.”は、1983年当時のミュージック・シーンど真ん中のデジタルでダンサブルなフュージョン音楽。トランペットがいななく。

Miles Davis:Decoy

Personnel
Miles Davis (trumpet, synthesizer, arrangements)
Bill Evans (soprano saxophone)
Branford Marsalis (soprano saxophone)
Robert Irving III (synthesizer, synthesizer bass & drum programming)
John Scofield (guitar)
Darryl “The Munch” Jones (bass)
Al Foster (drums)
Mino Cinelu (percussion)
Gil Evans (arranger)

“Freaky Deaky”。
冒頭から、蠢くベース、その上を走るシンセサイザーの響きに心奪われる。何とクールな!!
また、”What It Is”。
ベースとドラムの小刻みなリズムに乗って発散されるトランペットの微量でありながら凄まじいエネルギー。
さらに、“That’s Right”。
アレンジャー、ギル・エヴァンスの真骨頂!モダン・ジャズを席巻したかつての音調を髣髴とさせる緩やかで嫋やかな雰囲気に感動。マイルスのトランペットは相変わらず金切り声を上げる。
ラスト・ナンバー、“That’s What Happened”。
ここに聴く解放の激しさ。
マイルスは徹底的にやりたいことをやりたいようにやり遂げる。
音楽にすべてを捧げるのだ。

ぶつかること、あるいは囁くこと。対話がすべて。

 

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3 COMMENTS

雅之

マイルスから教わったこと。
アコースティック楽器と電子楽器を区別する必要など無いということ。
何故なら、楽器自体が人間では無く機械だから、電気を使おうが使うまいが大した問題では無いから。

マイルスから教わったこと。
何かを得ようとするなら、何かを失えということ。彼の音楽人生はスクラップアンドビルドの繰り返しだった思います。

私も、CDを断捨離した後の空きスペースに、別な趣味の持ち物が続々と占拠しつつありますが(苦笑)。しかし、CDというものが、CD盤を構成するアルミもポリカも経年劣化し数十年と長持ちしないもので、所詮骨董のお宝には成り得ないことや、こちらの人生の残り時間を考えたら、本当に大切な音盤だけ現物を残し、もう少し必要なものはデータだけ違う媒体に写して、さっさと売却することが得策と考え決断した次第です(中古店の買取価格も、ここ数年で驚くほど下落し驚きました)。

里山を維持していくには、定期的な伐採を繰り返しながら、新しい木を育てる必要がありますよね。マイルスは本能的にそれを理解していたのだと思います。

良いお年を。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
9月に数年ぶりに再会しまして、こうやってまたちょくちょくコメントをいただき感じるのですが、以前に増して雅之さんの状態が格段に進化、深化しているのを感じます。
スクラップアンドビルドはすべてに通じる基本だと僕も思います。

>CDを断捨離した後の空きスペースに、別な趣味の持ち物が続々と占拠しつつありますが

このあたりの不完全さ(?笑)も雅之さんならでは!!

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