アルゲリッチ&バレンボイムのストラヴィンスキー「春の祭典」ほか(2014.4.19Live)を聴いて思ふ

mozart_schubert_stravinsky_argerich_barenboim467軽雨。
春の兆しを思う。
生きとし生けるものが蠢き、生命活動は活発になる。
自立せよという声が聞こえる。そしてまた、縛られるなという音を耳にする。

何と清澄な「春の祭典」。ここには一切の野蛮さなく、極めてソフィスティケートされた美しさのみがある。その上、二人のピアニストが完全に一体となってひとつの音楽を創造する様に度肝を抜かれる。何より呼吸の素晴らしさ。

第1部「大地への讃仰」における慈悲の深さ。原曲では弦のトゥッティによる激しいリズムをもつ「春の兆しと乙女たちの踊り」の正確さに舌を巻く。天才。そして、「大地の踊り」の猛烈なアッチェレランドに卒倒し、中間のゆったりとした愛らしさに心動く。
第2部「生贄の祭」の壮絶さ。中でも「祖先の儀式」の神秘性、あるいは終曲「生贄の踊り、選ばれた乙女」のふくよかな響きと崇高さ、また劇性!!

音楽という現象は、物事のなかにひとつの秩序を、人間と時間とのあいだの秩序をも含め、そしてとりわけ人間と時間とのあいだにひとつの秩序を設定することを唯一の目的に、私たちに与えられている。現実のものとなるために、音楽現象はしたがって、必ずまたひたすらひとつの構築を必要とする。いちど構築がなされ、秩序が達成されれば、すべては言われたことになる。そこに何か違うものを求めたり、期待しても無駄だろう。私たちの内部に、まったく特別な性格をもった感動を生み出すのはまさにそうした構築、そうした成就した秩序であり、それは日常生活の諸印象とはなんら共通するものをもたない。
イーゴリ・ストラヴィンスキー著/笠羽映子訳「私の人生の年代記―ストラヴィンスキー自伝」(未來社)P66

なるほど、秩序あるがゆえの自由であり、爆発なのである。音楽は真に素晴らしい。

・モーツァルト:2台のピアノのためのソナタニ長調K.448(375a)
・シューベルト:自作の主題による変奏曲変イ長調D813
・ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」(2台ピアノ版)
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
ダニエル・バレンボイム(ピアノ)(2014.4.19Live)

ベルリンのフィルハーモニーでの実況録音。
盟友バレンボイムとのデュオはアルゲリッチにとってどれほど意義深いのか?
バレンボイムはアルゲリッチのことを「額縁のない美しい絵」と評する。そう、どこまでも自由奔放な美なのである。
なるほど、おそらくこの演奏の肝はバレンボイムが「額縁」を演じていることにあるのだろう。
ストラヴィンスキーが前世紀に生み出した傑作を二人のピアニストが見事な絵画として再創造した奇蹟。完全である。

そうして、脱力のモーツァルト。どの音も可憐で躍動的。二人の天才ピアニストがこの瞬間を本当に楽しんでいることがわかる。第2楽章アンダンテの愛らしさ。
互いが互いを触発し、透明なモーツァルトを奏でる。

また、シューベルトは「歌」に満ちる名演奏。
何より哀感帯る主題に心奪われる。また、8つの変奏も各々が互いに影響し合い、調和を築く。
聴衆の拍手喝采が熱い。

 

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2 COMMENTS

雅之

>バレンボイムはアルゲリッチのことを「額縁のない美しい絵」と評する。そう、どこまでも自由奔放な美なのである。
なるほど、おそらくこの演奏の肝はバレンボイムが「額縁」を演じていることにあるのだろう。

私は、鬼籍に入ったばかりのアーノンクールの「額縁」で・・・。

シューマン:ピアノ協奏曲
アルゲリッチ &アーノンクール &ヨーロッパ室内管弦楽団

http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3-%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%B2%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%81-%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%BF-%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%83%AB-%E3%82%AE%E3%83%89%E3%83%B3/dp/B0000ZP4M4/ref=sr_1_1?s=music&ie=UTF8&qid=1457379645&sr=1-1&keywords=%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%8E%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%80%80%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%B2%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%81

愛聴盤でした。
春は、別れの季節でもありますね。

返信する
岡本 浩和

>雅之様

アーノンクールは残念でしたね。
ご紹介のシューマン、僕もリリース当時よく聴きました。素晴らしい演奏です。

>春は、別れの季節でもありますね。

はい、悲しいですが。

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