クレンペラー指揮フィルハーモニア管のベルリオーズ「幻想交響曲」(1963録音)を聴いて思ふ

ブルックナーの交響曲第3番などに触発され、「クレルヴォ交響曲」を生み出したシベリウスは、その後、ベルリンで聴いたベルリオーズの「幻想交響曲」に大きな感銘を受け、そのことが交響曲第1番の創作に直接つながったといわれる。

1898年3月2日のスケッチ帳。

3月2日、《幻想交響曲》を聴く。おお、何と聖なるインスピレーション!聖なる女神!
神部智著「作曲家◎人と作品 シベリウス」(音楽之友社)P80

1830年の作品とは思えない自由さ、革新性。
「幻想交響曲」にある、単に「浪漫的」という言葉では括れない、外に向って発せられる強烈なエネルギーは、後世の作曲家に多大な影響を与えたが、ジャン・シベリウスにとってもそれは、それまで聴いたことのない別世界の境地だったのだろうと想像する。

オットー・クレンペラーの「幻想交響曲」を聴いた。
相変わらず遅いテンポと深い呼吸の下繰り広げられる、クレンペラー節満載の解釈。
音楽は明朗というより重厚かつ暗澹たる様相を示し、果たしてこれが「幻想交響曲」なのかと思う節もあるが、一切の標題を無視し、絶対交響曲としてとらえたとき、それはフルトヴェングラーがベートーヴェンの交響曲第6番「田園」で見せた解釈同様、聴く者に大いなる感動を与えるのだということがわかる。

その点について、神部智さんは次のように書く。

《幻想交響曲》がシベリウスに影響をおよぼした要因は、個々の標題や固定楽想などではなく、想像力のファンタジックな飛翔、その並々ならぬ燃焼度、そして従来の枠組みに囚われない自由な形式構成であった。
~同上書P80

もしそうならば、他のどの演奏よりもクレンペラーの演奏こそがシベリウスに影響を及ぼした「幻想交響曲」に近いだろう。

・ベルリオーズ:「幻想交響曲」作品14
オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団(1963.4&8録音)

18分超を要する第3楽章「野の情景」が素晴らしい。後にマーラーがやったように、第3楽章を鏡とし、シンメトリーと成るよう設計された作品が、クレンペラーの精緻な解釈によって見事にその威容を現すのである。
第4楽章「断頭台への行進」は、どういうわけか実に軽快で、恐怖を煽るどころか、ある種の舞踏音楽として表現されるかのよう。

穏やかで献身的な姉である音楽に対して、妹としていつも挙げられるのはダンスである。音楽の側から言えば、こちらはどんな場合でも、ダンスに対して献身的であると示している。それは、この魅力的な姉妹の片方がもう一方に献身的でないという振る舞いの類ではない。大昔からそうなのだが、いたるところでこれらは結束し、固く結び付き、他の芸術や科学、哲学、そして恐ろしくいい趣味に対してさえも、徹底的に闘う準備をしている。
「音楽とダンス」
エクトル・ベルリオーズ/森佳子訳「音楽のグロテスク」(青弓社)P260

ベルリオーズの想定通りの音楽が鳴る。
そして、第5楽章「ワルプルギスの夜の夢」での、繰り返される「怒りの日」の主題のあまりの武骨さに僕は感動を覚えずにいられない。

 

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