好きで向いていること

beethoven_symphonies_rattle_vpo.jpg先週に引き続きポジティブ心理学講座基礎講座の2回目。「自己理解と環境設定」というテーマでとても意義深い時間を過ごさせていただいた。知らなかったこと、初めて聴くことがたくさん。例えば、「好きで向いていること」に出会って、効率的に努力すると、大きく夢が叶うのだと。しかも、統計的に小学校4年生から6年生の時(つまり10歳から12歳)に好きで一生懸命取り組んでいたことが、大人になって芽が出る確率が高いということで、親がその時期に「子どもが何が好きで何に向いているのか見つけてあげられるかどうか」が、その子の将来を大きく左右するということになるらしい。そういえば、イチローも石川遼も、あるいは浅田真央もすでにその年齢の時に親が才能を見抜き、それぞれの世界で並はずれた才能を発揮し始めていたようだから、その話も頷けるというものだ。

晴香先生曰く、ゴールデン・エイジといわれるこの10歳から12歳という時期に多くの子どもたちを塾に通わせて勉強一色にしてしまわざるをえない世の中のしくみに今の教育の問題の根本原因があるのだと。確かに・・・。

その年齢当時の僕はどうだったのだろう?残念ながら(苦笑)、大した記憶はない。田舎育ちだったから塾通いを強いられたわけでなし、かといってスポーツに夢中になっていたわけでもないし、音楽や読書に没頭していたわけでもない。本当に平々凡々に時間の流れるまま何となく過ごしてしまっていた(涙)。失った時間は取り戻しようがないから、凡人は凡人なりにこれから一生懸命努力しよう(遅いか?・・・笑)。

いずれにせよ、自分が子どもを育てることになったら、教わった点を意識してやってみようと思った次第(そうすれば「天才」が育てられるかも?!)。

古今東西、天才といわれる音楽家のほとんどは、ゴールデン・エイジの時期には既に一端の音楽家として世に知られる存在だった。バッハもモーツァルトも、そしてベートーヴェンも。ボン時代のベートーヴェンの師であった、宮廷オルガニスト、クリスチャン・ゴットロープ・ネーフェは次のように書き残している。

「1782年6月20日に我々は選帝侯が滞在しておられるミュンスターに旅立った。その前日に、私の前任の宮廷オルガニスト、ヴァン・デン・エーデンの葬式があった日であったが、私は不在中の(オルガニストとしての)任務を助手に任せて旅立つ許可を得た」(新潮文庫カラー版作曲家の生涯「ベートーヴェン」より引用)

この助手こそが11歳半のベートーヴェンのことであった。師の代役を務めるうちにその腕前はすでに師を凌ぐものになっていたらしい。

ベートーヴェン:交響曲第8番ヘ長調作品93
サー・サイモン・ラトル指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

「リズムの神化」第7交響曲完成の直後に書かれた小さな交響曲。深刻さの一切ない明るく小さな姿かたちを持つが、その内容はとても深い。ベートーヴェンの9つの交響曲はそれぞれに個性がありどれも傑作だが、最近では実は第8こそが最高傑作なのではないかとすら思える瞬間が多々ある。聴けば聴くほど味が出る「スルメ」の音楽なのである。ラトルが2002年にウィーン・フィルと録音した全集からの1枚。滑らかで耳触りのよい、しかも都会的センスに溢れる解釈は、ベートーヴェンの音楽を知るという意味では最適盤。しかしながら、繰り返し聴いてみたいと思えないところが少し残念。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
私の持つ印象では、ベートーヴェンの交響曲第5番までの交響曲を建築で譬えれば、特に第3番「英雄」や第5番「運命」では、ひたすら強固な建物の堅牢さを追い求めて大地震の揺れに対処していたのが、第7番は地震で生じる揺れを「しなる」ことで吸収する「耐震構造」を採用し、さらに第8番では、地震力を建物に直接伝えないようにし、地震に強いだけでなく揺れそのものを軽減する「免震構造」を採用しており、ベートーヴェンの耐震技術の進歩を垣間見ることができるように思います。
※参考
http://realestate.homes.co.jp/contents/hikkoshigakuen/cont01/04/
こうした彼の建築技術の進歩の積み上げにより、第9交響曲という、当時としては破格の「超高層ビル」の建築が可能になったのでしょう。なお、第6番「田園」については、都市の住環境には人々が安らぐ植栽が必要なことを、ベートーヴェンはちゃんと気付いていたのだと想像します(笑)。
ベートーヴェンは、苦労して、努力して、過酷な運命に立ち向かう術を身に付けたのでしょう。旅人のマントを力ずくで脱がそうとした北風が負けて、ぽかぽかと暖めて旅人自らがマントを脱ぎ捨てるように仕向けた太陽が勝ったという、イソップ物語の「北風と太陽」のように、過酷な運命には、ただ抗(あらが)って勝とうとするだけでは駄目なんだということを・・・。こういうことを、ささっとマニュアルで効率よく覚えることは、いくら天才でも出来ません、それなりの実体験が伴わないと・・・。
ラトル&ウィーン・フィルの8番、いいですよね。ただラトルのEMI録音全般にいえることですが、録音で損しているような気がします。
私が今改めて聴き直してみたい8番の録音は、前にもここで話題になりました、ワインガルトナー&ウィーン・フィルです。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/474063
1936年2月24日~26日の録音、そう、日本ではニ・ニ六事件が起きた時の記録です。このところ何故か日本史づいておりますので・・・(笑)。しかし当時のウィーン・フィルの、現在ではすっかり失われた響き、本当に魅力的です。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
ベートーヴェンのシンフォニーを建築でたとえる試み、見事です。まさにおっしゃる通りの進化をしていますものね。しかも、「人々が安らぐ植栽」交響曲まで置いていることが最高です。
>こういうことを、ささっとマニュアルで効率よく覚えることは、いくら天才でも出来ません、それなりの実体験が伴わないと・・・。
ほんとですよね。人間、無駄な体験はひとつもないということですね。
>EMI録音全般にいえることですが、録音で損しているような気がします。
確かにそうかもしれません。
ワインガルトナー&VPOの第8は本当にいいですよね。採り上げたのはちょうど1年前でした。月日の経過は早いですね。
ところで、父のブログ上での「教育勅語」のやりとり読ませていただきました。僕もこれについては知りませんでした。法律よりよっぽど心に響きますね。

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