本日帰京

bruckner_5_jochum_1986.jpg「自分らしく生きるとは?世界(外)に向けて何ができるのか?」
帰りの車中で少し頭を冷やしながら考えていたこと。

いよいよ激動の、そして飛躍の新しい年が始まる。新宿西口から自宅まで歩くと、街は相変わらずの賑やかさ。昨年後半から政治でも経済でも、そして社会面においても、どこをどうひっくり返しても暗いニュースがあとを絶たないが、何だかそういう情報も嘘のよう。
いただいた年賀状をざっと見渡しても、「未曾有の不況」などといわれる時代にもかかわらず、それぞれが前向きに大いなる目標を持って生きていこうと決意する言葉が並ぶ。人それぞれがそれぞれに今の生活を楽しんで、そして未来に向けて希望を持って生きてゆけば難なく乗り越えられるのではなかろうかと思われるほど。いや、「不況」などというのはマスコミが作った幻想で、それこそ情報に左右されて皆の財布の紐が固くなってしまっているだけなのではないか・・・。

確かにこれまで誰も経験したことのない経済状況で、先行きが全く見えないというのはそうなのだろう。しかし、まぁ悲観することはない。いわゆる「お金」本位の資本主義というものが最終点に来ているということだけ。お金を持っている人がよりお金持ちになり、お金のない人がますます貧乏になってゆくというシステムがそもそもおかしいのだから。

ブルックナー:交響曲第5番変ロ長調
オイゲン・ヨッフム指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(1986.12.4Live)

以前ぷみ君が血眼になって中古CD屋を漁っていたCDが再発された。朝比奈先生が亡くなって以来、ブルックナーからも遠ざかっていたので僕自身は完全に見落としていた音盤。
しかししかし、これは確かに素晴らしい!まさに最晩年、死の3ヶ月前の巨匠渾身の名演奏。

自分らしく生きるとは?
ともかく自分の信じる道を追求し、死ぬまで現役でやり続けること

世界(外)に向けて何ができるのか?
自分らしさを追求することに尽きる。それが人に喜んでいただける近道か。

ちなみに、僕が最初に手に入れたブル5はヨッフム指揮ドレスデン・シュターツカペレのレコード(新譜で¥5,000だったか・・・)。第7や第8、そして第9という後期交響曲の虜になり、毎日のようにブルックナーに漬かり切っていた僕でも、この第5交響曲をモノにするのには随分時間が掛かった。この曲を真の意味で理解できたのはそれから15年以上経ってから。上野での朝比奈先生の実演。
そして、ヴァント&ベルリン・フィルの名盤などによって・・・。
2009年最初に採り上げるに相応しいクラシックCDとしてこれ以上のものはなかろう。


10 COMMENTS

雅之

おはようございます。
「不況」のマスコミ報道については、私は「もっとやれ!」とさえ思っています。「大本営発表」や「某民主主義人民共和国の報道」より、よほどマシです。社会の負の部分、暗部をえぐり出すのはマスコミの責務です。平和ボケして考えることを止めた日本人には、問題をどんどん先送りして、孫子の世代や弱者にツケを回す今の社会システムのあり方がいかに異常かを、よく身にしみて認識してもらう必要があります。そのために、こういう報道は大切です。
今の経済の「戦況」を皆が正しく把握し共有すること、これは皆でより良い社会を構築していくために、極めて重要なことです。
人間に対しても社会に対しても、光の部分も翳の部分も受容すること、まずそこからスタートする必要があると思います。
ご紹介のCDについては、ぷみさんのコメントを待ちましょう(笑)。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>今の経済の「戦況」を皆が正しく把握し共有すること、これは皆でより良い社会を構築していくために、極めて重要なことです。
確かにそうですね。ただし、やっぱり煽り立てるだけじゃだめだと思うんですよね。そういう意味ではマスコミは無責任です。社会の根底から「しくみ」を変えていこうと意識を持つ人が一人でも増えていくといいなと思っています。いわゆる「対症療法」的な解決方法では無理ですね。

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hana

岡ちゃん、あけましておめでとうございます。
昨年岡ちゃんのおかげでぴろちゃんやともちゃんに逢えてとても嬉しかったです。
彼女たちがお店に来たあと、ブログに書き込んだつもりが・・・・「あれ?」。
今更ながら送信できてなかったことが判明・・・。
今年は過度の「機械音痴」と「運動音痴」を普通レベルにしたいと思ってます。
てなわけで、遅ればせながらありがとうね!
今年もどうぞよろしくお願いします。

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岡本 浩和

>hana
こちらこそいつも読んでいただいてありがとう。
人の輪が広がっていくのは素晴らしいよね。
またゆっくり語りましょう。
今年もよろしく。

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雅之

こんばんは。
マスコミが無責任なのはおっしゃるとおりだと思います。私も東京にいる時、ある件のマスコミ対応でそのことを痛感しました。御都合主義の権化で、ヤクザな商売だなあとも思いました。
でも今回の件は、無闇に不況を煽っているわけではないと思うんですよね(彼らは好景気時には好景気の報道をしています)。彼らは一等船室にはいるものの、彼らなりに広告収入の激減などの不況を実感したうえで地道に現場取材し、真面目に番組や紙面を制作しているだけだと思います。それに一方で、不況に強いビジネスや、円高や原材料価格低下によるメリットなど、明るい材料もちゃんと調べて報道しています。特に偏向しているとも思えません。
また、テレビ局ではバラエティ番組等であれだけ超楽観的な番組を乱造して公共の電波で流している以上、「不況についての報道」なんて取るに足らないと思いますし、個別企業の風評被害ならともかく、アメリカ発の金融資本主義の崩壊といった実体経済のダイナミズムに比べたら、マスコミ報道の影響力など、たかが知れていると思います。
不況によって現在死ぬほど苦しんでいる、特に若い世代が多数存在するのは歴然とした事実です。「大昔は世の中もっと厳しかったし、これも自己責任なので諦めなさい」と言ったって、ひとりひとりに罪はまったくありません。同年齢のころの私より数等努力しているのに・・・理不尽です。社会システムの欠陥による犠牲者というしかないと思います。
>社会の根底から「しくみ」を変えていこうと意識を持つ人が一人でも増えていくといいなと思っています。
同感です。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。なるほど、なるほど。僕も同感です。確かに当事者の若者たちに罪はないですよね。「社会システムの欠陥による犠牲者」であることは間違いないと思います。
こういう話はまたじっくりとお会いしたときにお話したいですね。なかなかメールやこういうPC上のやり取りでは難しいです・・・(苦笑)。

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ふみ

19日のブログに投稿出来ないだろうと思って投稿したら出来てしまったのでこちらにも(笑)ずっとこっちのPCからは投稿出来ないはずだったんですが。
現在は日本のみならず先進国では100年に1度と言われるほどの不況になってますよね。やはり盲目的に信じていたアメリカ的な経営、資本主義が限界に来たということなんでしょうね。去年はあのリーマンショック以来あのBIG3まで統合話が出て来たり国からの多額の資金注入を受ける事になったり、世界のトヨタまで北米での売り上げが大幅に下降したことで赤字を記録したりと「まさか」と思っていた事が次々に起きた年でした。小泉氏の改革は確かに経済をダイナミックにし日本経済を強固なものにしたということは変えがたい事実だとは思いますが、いつぞやか忘れましたが坂下厚生労働大臣と共に行った製造業への派遣許可法(名前はうろ覚えです)は今日反省すべき改革だったと思います。実際今のワーキングプアの方達の85%ほどが製造業に携わっていた人だったと思います。キャノンやトヨタなど社民的評論家からは悪の大王のような存在として見られています。自分自身、来年か再来年に就職活動を控えた身として不安で一杯ですが自分のやるべきことをやるって以外に本当に道はないなぁと痛感している次第です。あっ、ちなみに雅之さんの
>同年齢のころの私より数等努力しているのに・・・
というお言葉ですが自分も含めた周りは間違いなく雅之サン世代よりも怠惰ですよ(笑)やはり高度経済成長以来に日本人の勤勉さには僕たち若者は頭が上がりません。。。
ご紹介のCDですが。。。そうなんですよ。あんなに血眼になって探していた伝説の音盤が再発されたんですよね。音質が落ちたとかどうやらって聞きますが恐らくそこまでの差異は無いかと思われます。僕はヨッフムのブルは前期交響曲はそうとは一概には言えませんが後期交響曲に関しては断然晩年になればなるほど素晴らしくなったと思います。どうも若い頃のヨッフムのブルは手を付け過ぎており「ここはこう聴かせよう」といった意思が垣間見え恣意的に感じることが多々あります。僕にとってブルに大切な要素は寛容・素朴・上品・自然です。そういう意味でまずミュンヘン・フィルというのはブルに打ってつけのオケだと思います。音色が非常に暖かく個々の団員が決して突出しない。これはロイヤル・コンセルトヘボウも同様かと思います。滑らかで暖かい弦に素朴な木管、決して威圧的響きではなく石造りの素朴な大伽藍を連想させる管のコラール。個人的にブルの音楽の素晴らしさというのは大伽藍の場面ではなく管のコラールやアダージョ楽章の上品さ・神聖さに見出せるものだと思います。こんな不謹慎なこと言うと怒られそうですがそういう意味で僕はヴァントのブルはあまり好きではありません。もちろん違った方向での素晴らしい演奏だとは思うんですがどうもコラールやアインザッツがきつくて。。。大伽藍の場面も鉄筋コンクリートのような大伽藍で。交通整理は非常にうまく対位法などの処理は素晴らしいと思うんですが。ブルはアドレナリン放出剤ではなく精神安定剤です!ご紹介のCDはブル5CDの中で最も素晴らしくヨッフムの全ブルCDの中でも最高の演奏だと思います。演奏について細かく言及したいところですが非常に長くなってしまったのでこの辺で。。。
遅ればせながら明けましておめでとうございます。昨年はお世話になりました。今年も講座に必ず行かせて頂きますので宜しくお願い致します。もう今から楽しみです(笑)いや、本当です!

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岡本 浩和

>ぷみ君
待ってました!(笑)
>自分自身、来年か再来年に就職活動を控えた身として不安で一杯ですが自分のやるべきことをやるって以外に本当に道はないなぁと痛感している次第です。
少なくとも「自分ができること」を明確にして、軸を定めた上で仕事選びをした方がいいよね。その節はまた教えてあげます(笑)。
しかし、ぷみ君のブルックナー論は的を突いてて大したものです。若いのに偉いよ。しっかりと自分の意見を持って、自分の耳を信じてるところがね。
>僕はヴァントのブルはあまり好きではありません。
おいおい!ヴァントのブルックナーをそんな風にいわないで(笑)。まぁ、十人十色いろんな見方、感性があるのでそれもよしとしましょう。とはいえ、2000年に聴いたヴァント最後の来日公演は今までの人生で最高の至高体験だったのは確かなので「普遍的」だと思うんだがなぁ・・・。
またゆっくりブルックナー談義しましょう。

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雅之

おはようございます。
ぷみさんのコメント、うれしいですね!またお会いして、濃いトークを交したいものです(笑)。
私は今の日本の社会システムは、貧富の格差よりも、世代間の不公平が最大の問題だと思っています。ぷみさん達の若い世代は、上の世代の作り上げた社会システムのせいで、ずいぶん不利益を被っていると思います。特に団塊の世代より上のかたには、高額の退職金をもらって、さっさと年金で自由な隠居生活なんて絶対に許せないと、申し上げたいです。学生時代、あれほど社会に対し大きな問題意識を持ちながら、こういう世の中を作ってしまった罪は、極めて大きいと思います。
ヨッフムは、話題のアムステルダム・コンセルトヘボウとのブルックナーの交響曲第5番の86年の超名演のライヴ録音時、84歳でした。バックハウスは、ベーム&ウィーンフィルとのブラームスのピアノ協奏曲第2番の決定盤の誉れ高い録音時、83歳でした(信じられます?)。彼らは死ぬ直前まで現役で、若い人々に幸せな気持ちを与え続けました。そして今日アメリカ大統領に就任したオバマは、私と同い年の47歳です。
共産主義でもない、金融資本主義でもない、機会平等の、真に努力したものが報われる、しかも弱者に温かい、基本的人権を保障した社会を構築していくのは、我々から上の世代の責務です。先輩方には、次世代以降の人が幸せになれる社会に変革できるよう、今一度正義感に燃えた御自分の青春時代を思い起こし、立ち上がっていただきたいものです。

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岡本 浩和

>雅之様
>共産主義でもない、金融資本主義でもない、機会平等の、真に努力したものが報われる、しかも弱者に温かい、基本的人権を保障した社会を構築していく
おっしゃるとおりです。イデオロギーというのはあくまで人間の「左脳」が作り出したものだと思います。頭で考えたシステムではなく、人種・性別・国籍を問わず(そもそもその概念がいけない)人間同士が他者を思い遣れる世の中になるといいですよね。

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