心身が歓ぶ一日断食

bach_szeryng_walcha.jpg数年前、山田鷹夫氏が著した「不食~人は食べなくても生きられる」という本を読み、当時ちょうど菜食に切り替えた頃で、動物性のものを摂るのを止めることは簡単にできても、さすがに食べないというのは無理だろう・・・、凄い人がいるもんだと感心したことを思い出す。氏は書の中で、「不食」により病気や不調が消える、疲れにくくなる、あるいは若返るなどの効能を説いているが、確かにそれはそうなのかもしれないと思った。例えば、今、世の中に溢れかえっているコンビニの弁当などの出来合いの食事などを考えてみると、保存料や着色料がどれほど使用されているかや、あるいはそれが本当に安全なのかどうかもわからないわけだから、それらを平気で口に入れることの恐ろしさを考えると怖くなる。一説によると、「食」が原因でアレルギーやアトピーなどの病気が増えているといわれており、そういう意味では「食べない」でいることが一番健康でいられる秘訣なのかもしれない。まぁ、「不食」というのは極論ゆえ、日頃から暴飲暴食せず、なるべく外食は避け、加工製品に頼るのではなく、できるだけ自分で一から作るという食生活をしていけば、心身ともに健やかで楽しく生活できるのだろう。

今日は満月ということもあり、一日「断食」することに決めた。お茶以外は一切何も摂取していない。大丈夫なのかと心配する方々もおられようが、これがなかなか心地よい。それこそ意識を他に向けていれば、空腹のことなどすっかり忘れてしまい、あっという間に時間は過ぎる。それでも外を歩いていてパンの焼ける美味しそうな匂いをかいだりすると、お腹が空いていることをふと思い出すわけだから、普段は「食べる」という行為にいかに注力しているか、つまり「いかに自分に意識を向けているか」をあらためて実感できたことが収穫である。心身のデトックスという上においても、「他に意識を向ける」ことを実践していく上においても、時には「断食」というのもいいものかもしれない。

J.S.バッハ:ヴァイオリン・ソナタ全6曲BWV1014~1019
ヘンリク・シェリング(ヴァイオリン)
ヘルムート・ヴァルヒャ(チェンバロ)

五臓六腑に染み入るJ.S.バッハの音楽。このソナタの演奏は本当に久しぶりに聴いた。父なるイメージの峻厳な無伴奏ヴァイオリンのための音楽に対し、このチェンバロ伴奏付のソナタの方は、愛と優しさに満ちた、母なるバッハを感じさせる傑作。演奏するシェリングも無伴奏のときとはうって変わり、真面目ながらもリラックスしたムードでヴァルヒャとの協演を楽しんでいる。こういう演奏を聴くと、一人孤独に闘うソロよりも、誰かとコミュニケーションを交えながら表現することの方が一層人間らしく思えてくる。音楽をするという行為は、演奏者同士、そして演奏者と聴衆とのコミュニケーションなんだな、と痛感。


2 COMMENTS

雅之

こんばんは。
ご紹介の演奏、最高ですね。この録音も大昔輸入盤LPで持っていたのに手放してしまいました。今考えるともったいないことをしました。本当に心温まるいい演奏だったし、空気感を感じる、フィリップスらしい、いい録音だった記憶があります。
現在手元にあって時々楽しんでいるCDはツィンマーマン(vn)パーチェ(p)の比較的新しい盤です。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2599122
シェリング達の名盤を聴かれているのに、あえておすすめはしません。しかし、この曲集のピアノ伴奏での演奏も中々いいものです。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
フィリップスの輸入盤LPをお持ちだったのですか!もったいないです!さぞ良い録音だったでしょうね。
ご推薦のツィンマーマン&パーチェ盤は未聴です。ピアノ伴奏盤もぜひ聴いてみたいです。

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