スーザン・ボイル

bach_goldberg_leonhardt.jpg人は見かけによらない。どこにどういう才能が埋もれているか、どういう逸材が隠れているか誰も見当がつかない。多くの場合、とっつきなどの外面的な要素で判断されてしまうことが多い。
彼女の場合もそうだったようだ。12歳の頃から歌が好きでいつも歌っていた。英国の片田舎で生まれ育った彼女には楽しみといえばそれくらいしかなかったのかもしれない。47歳の今も独身だという。キスされたことすらない「箱入り」だとも。容姿は決して端麗ではない。美人でもない。それなのに最初の一声から観衆は釘付けにされた。登場してすぐ審査員が怪訝な顔で尋ねたのは「これまでどうして表舞台に出られなかったのか?」という質問(おそらくその外見だけで判断してみくびっていたのだろう)。それに対し彼女は、今まで単に「チャンス」がなかったのだと。

彼女の名前はSusan Boyle。つい先日来全世界のマスコミで取り上げられ、評判になった彼女の「信じられない」歌声。言葉にすると陳腐になるのでとにかく見てほしい。
http://www.youtube.com/watch?v=1t8m7CkpIK0

発表する舞台がなければ、「受容」どころか「認知」すらしてもらえないという当たり前の現実。ブルックナーも同じような現実と自身の狭間で闘っていたのだろう・・・。

生憎の雨模様の中、銀座で友人の結婚式。結局3次会まで共にし、帰宅したのは23時前。10年近くぶりに再会した人たちもいる。それだけ歳を重ね、皆大人になっているが、基本的には変らない。あっという間に「時空」を超え、当時の「関係」に戻る。共に苦しみ、共に喜び、あるときは同じ釜の飯を食べた間柄というのは、たとえ年齢の差があれども、会えば「人間対人間」のつきあいができる。貴重な「関係」だ。

「癒し」を求めて「眠り」の音楽を聴く。

J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲BWV988
グスタフ・レオンハルト(チェンバロ)(1976.8)

ゴルトベルクといえば真っ先に思い浮かぶのがグレン・グールドの新旧両盤、そしてザルツブルク・ライブ。もちろんその音盤の絶対的価値は永遠に変らないだろう。つい聴きたくなった時に取り出すのもグールド盤が圧倒的に多い。しかし・・・、本日はあえてチェンバロでの演奏。夜更けに疲れた心身を癒すに、グールドの演奏はある意味刺激的過ぎる。僕にとって耳に邪魔にならない、いわばざっと聴き流せる名演奏がこのレオンハルトによるもの(決して悪い意味じゃなく)。チェンバロの音は早朝に相応しいと思うが、夜更けに最弱音で鳴らしてみるのも乙なものだ。


4 COMMENTS

雅之

おはようございます。
Susan Boyleの話題、ビジュアルを重視する現代だからこそ、話題になるんですよね。
昔だったら、例えばああいう「おばさん」(といっても、私と同い年!)の益荒男容姿の名女性オペラ歌手など、いっぱいいたわけですから。
バッハも、ブルックナーも、絶対音楽の作曲家としての最高峰ですが、異なるのは、バッハの方が、はるかに解釈の許容範囲が広いことですよね。ご紹介のレオンハルトのチェンバロでの名盤、私も好きです。
※今日、娘がピアノの発表会で弾く2曲のうちの1曲、L.C.ダカン作曲「かっこう」を紹介したサイトを見つけました(音声付)。
http://www.geocities.jp/mani359/2mei0605daquin.html
この曲なども、もともとチェンバロの曲ですが、ピアノで弾くと強弱の表情が付いたりして、雰囲気が相当変わりますよ。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
そうですね、外見重視というのはわかるんですが(笑)、本質もしっかり見極めてからにしたいものですね。
おっしゃるとおり、解釈の許容範囲は圧倒的にバッハが広いですね。極めて普遍的です。
ダカンの「かっこう」ってこの曲だったんですね。
お嬢さんに「がんばって」とお伝えください。

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アレグロ・コン・ブリオ~第4章 » Blog Archive » 追悼グスタフ・レオンハルト

[…] 僕は、バッハの鍵盤作品の中でも「平均律」や「ゴルトベルク」を差し置いて実に最高傑作なんじゃなかろうかと思ったことが幾度もあるほど「フランス組曲」が殊の外好きで、時にチェンバロで、時にピアノでというようにその時の気分に合わせて様々取り出して聴く。何だろう、解釈の幅が非常に広いというか、どんな演奏でも受容してしまう器の大きさと、そして多種多様な舞曲によってウキウキしたり、悲しくなったり、いろいろな感情がその中に聴いてとれるところがお気に入りの理由かもしれない。 […]

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