きらきら星変奏曲

mozart_variations_barenboim.jpg愛知とし子の次作のレコーディングのためかながわアートホールに丸一日缶詰。J.S.バッハ、クープランなどのバロック音楽で手慣らし後、本命の朗読付シューマン「子どもの情景」。そしてモーツァルトの「きらきら星変奏曲」と続く。何度も推敲を重ねては念入りにプレイバックを聴き、ひとつひとつを完成させてゆく。地道な作業だが極めて興味深く、面白い。
それにしてもこれほど執拗に(笑)「きらきら星変奏曲」を聴いたことがこれまであったろうか。各変奏を集中して聴くにつれ、モーツァルトの「天才」が手に取るようにわかる。こんなに素晴らしい楽曲だとはつゆ思わなかったというのが本音だ。日本では童謡「きらきら星」で有名なこの音楽は、元は18世紀に流行したフランスの「ねぇ、お母さん聞いてよ」というシャンソン。この可憐な旋律から青年モーツァルトが上下左右360度の視点から12の変奏曲を作曲した。それはそれは神の啓示の如くの美しい類稀な音楽(ここまで絶賛するような音楽なのかどうかは正直疑問だが、何度もしつこく実演で聴いて心底そう感じるのだからやっぱり名作なのだろう)。

本日の愛知とし子は随分気合いが入っていた。バッハの「G線上のアリア」然り、クープランの「神秘の防壁」然り、ほぼ完璧といえるパフォーマンスだったと思う。それに、何より「子どもの情景」が素晴らしい。近い将来CDとして陽の目を見ることになるが、ぜひぜひ多くの方に耳にしていただきたいと思う。

モーツァルト:フランスの歌「ねぇ、お母さん聞いてよ」による12の変奏曲(きらきら星変奏曲)ハ長調K.265(300e)
ダニエル・バレンボイム(ピアノ)

バレンボイムはほぼ指揮者としての活動が主になり、彼の天才的なピアノ・パフォーマンスを聴けなくなったことが残念と言えば残念。20年近く前、ブラームスの2つの協奏曲を一晩で弾き振りするというコンサートに触れたが、大変に感動的な演奏だったと記憶する。アシュケナージもそうだが、彼らのような大ピアニストは余計な下心を出さずに(要は指揮者に転向など考えずに)一ピアニストとしてとことんまで突き詰め活動してほしかったと僕などは思ってしまう。指揮者は自分が演奏するわけじゃないから体力的には随分楽なのだろうが、そもそもの原点に戻り、あくなき追求を忘れないでいてもらいたいのだ(要は自分で身体を動かせ、と。笑)。

明日も一日かながわアートホールでのレコーディングが続く。明日はロマン派の楽曲を中心に録音する予定。さて、今から第2弾CDのお目見えする日が楽しみだ。


3 COMMENTS

雅之

おはようございます。
愛知とし子さんの次作CD、9月の多治見公演と共に、今年最大の楽しみになりました。昨年実演を聴いたモーツァルトの「きらきら星変奏曲」なども、セッション録音でも聴いてみたいですが、朗読付シューマン「子どもの情景」がレコーディングされるとは知りませんでした。実演が聴けなかったので、楽しみで楽しみで堪りません!!発売予定はいつですか?
素晴らしいCDになることを心よりお祈りいたします。
「子どもの情景」といえば、先日話題にしましたアファナシエフの新盤が昨日HMVから届きました。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3593746
昨夜は「交響的練習曲」のみを聴いたところです。最後の拍手付きのライヴ録音ですが、編集の手がどこまで入っているかはわかりません。遺作5曲の挿入の仕方は、予想通り凝ったものでした。
演奏はアファナシエフらしい遅めのテンポを基調にした極めて個性的な解釈で、凄いなあと思う反面、この人もライヴで聴くべき人だろうなあと、改めて思いました。指揮者チェリビダッケと同様に・・・。いずれにしても「子どもの情景」も含め数回聴いてみないと、このCDの自分なりの評価は定まらないだろうと感じています。
アファナシエフもバレンボイムと同じく指揮活動を行っていますね。ピアニストに弦楽器のことが分かるわけがないとは思うものの、その活動自体を否定はしません。
しかしアファナシエフとバレンボイムではひとつの曲に対するこだわりかた、練り上げかたが大きく異なるのだと思います。指揮者バレンボイムは、単なるビジネスだと言われても仕方がない「やっつけ仕事」の録音が多過ぎます。そんなもん、発売するな!と言いたいです。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
発売日は未定でして。決まりましたらお知らせいたします。
おー、アファナシエフのCD届きましたか!
>凄いなあと思う反面、この人もライヴで聴くべき人だろうなあと、改めて思いました。指揮者チェリビダッケと同様に・・・。
あー、その通りでしょうね。来月18日に実演を聴けるので楽しみです。
>指揮者バレンボイムは、単なるビジネスだと言われても仕方がない「やっつけ仕事」の録音が多過ぎます。
おっしゃるとおりです。僕もピアニストの指揮活動そのものは否定しませんが、「やるなら命を懸けてやれ」と思います。えらそうですが・・・(笑)。

返信する
相坂政夫

日本の童謡22曲が純正律音楽で(歌は入っていません)、
CD「ふるさと」として5月8日に新発売されました。
CDのご注文は下記URLからお願いします。
NPO法人 純正律音楽研究会
事務局 相坂政夫
http://just-int.com/

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む