問い

beethoven_1_2_suk_trio.jpg表に出ていないもので「売れるもの」を探すことが趣味だという人。自分はいわゆる「営業マン」ではなく「職人」だと公言する。何をどうすれば売れるのか、その仕組みを考えることが面白くて堪らないのだと。その彼とは20年来のつきあいだが、ここ2年ほどは会うことがなかった。友人に乞われ、その彼を引き合わせた。「物を売ること」についての熱い想い、そして生半可な努力じゃないこと、しかもそれが「努力」ではなく「好き」でやっているんだということを2時間にわたって語ってもらったが、話を聴いた人間が誰でも動機付くのだから面白い。人をやる気にさせる魔法っていうのはこういうことをいうのだろう。ただし、やる気になったところで具体的に行動をしない人が90%なのだと。確かに・・・。教わったことをそのまま行動に移すのは簡単なようでいて決して易しくはない。じゃあ、具体的な行動の第一歩って何なんだろう?

いろんな事象に興味を持ち、子どものように「なぜ?」ということを常に自問しろという。そして人にも疑問をどんどんぶつけろという。「問い」が新発見、新発明につながるのだと。とことんまで突き詰めて、突き詰めてみると・・・最後は何らかのヒントに行き着くのだと。なるほど。そういえば、昔駿台予備校で英語を教わった表三郎氏が著した「問いの魔力」にも同じようなことが別の角度から書かれていたっけ。

あなたが「問い」を抱いたその瞬間に、人生の質は向上している。
人の人生は、どのような「問い」をもって生きてきたかで決まる。
大切なのは、人生に勝つか負けるかではない。「みずからの問い」に対して粘るか粘らないかだ。

ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第1番変ホ長調作品1-1&第2番ト長調作品1-2
スーク・トリオ
ヨゼフ・ハーラ(ピアノ)
ヨゼフ・スーク(ヴァイオリン)
ヨゼフ・フッフロ(チェロ)

録音:1983年12月、1984年4月 プラハ、ルドルフィヌム(芸術家の家)

作曲家ベートーヴェンの栄えある第一歩であるピアノ三重奏曲作品1。ベートーヴェンこそ「なぜ?」という疑問を生涯投げ続けた芸術家のひとりなのではないかとこの音盤を聴きながらふと思った。23~4歳の若き楽聖が初めて世に問うたこの作品は、まだまだ先人の影響の域を脱しているとはいえないが、それでも随所に後年のベートーヴェンらしさを髣髴とさせるところが見え隠れする。そう、ここでいうベートーヴェンらしさとは「気難しさ」とでもいうのか。いや、とはいえ後年のような「苦悩」ではない。どちらかというと希望に満ちた前途洋洋の気配さえ感じさせる中に「自問する」前向きさとでも表現しようか。「これでいいのかな?」・・・そんな「問い」がこの音楽にはある。

めぐろパーシモンホール・小ホールで開催された「ツルギ~ヤマト歌と剱舞~」を観た。桜月流美剱道によるユネスコ凱旋公演。昨年のフランスでの公演の再演。宗家神谷美保子さんの舞台はこれで3回目となるが、相変わらず素晴らしい。


6 COMMENTS

雅之

おはようございます。
ヨゼフ・スークは私の学生時代、シェリング、グリュミオー、カントロフ等と共に、最も好きなヴァイオリニストのひとりでした。スメタナ四重奏団とともにチェコの弦楽器奏法の最高峰だと、今でも思っています。
彼の演奏は80年代前半、ピアノのパネンカとの組合せは実演も聴きましたが、とにかくすこぶる美音でした。同じすこぶる美音でも、録音で聴くグリュミオーは、もっと色(色気?)を感じますが、スークの、チェコの奏法の伝統から生まれる美音は、清純、ピュアな精神性、といった感じが強かったです。こういうそれぞれの奏法の系譜は、後の世代にも高い水準で引き継がれて欲しいと願っています。
また、スークは積極的にヴィオラを弾きましたので、趣味でこの楽器を弾いていた私には、その意味でも愛着がありました。バウムガルトナー&ルツェルン弦楽合奏団の「ブランデンブルク協奏曲」新盤の第6番におけるスークのヴィオラは、今でも私の理想です(第5番の彼のヴァイオリンも当然最高!)。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1215938
スークの音は、1980年代に比べ、60年代は更に美しかったといいます。カッチェン(ピアノ)との、ブラームスのヴァイオリン・ソナタなどを聴くと、なるほどと実感できます。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/874644
私の父と同じ、大恐慌の1929年に生まれた演奏家では、ヨゼフ・スークの他、アーノンクール、ハイティンク、プレヴィンがいますが、私は前述の理由で、スークに一番親近感を持っています。
でも、みんな長生きして欲しいです。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。ヴィオラを弾くという点でも、スークは雅之さん好みのヴァイオリニストなんだろうなと思ってました。しかもお父様と同年だとなおさら愛着が湧きますよね。
>チェコの弦楽器奏法の最高峰
へぇ、チェコの弦楽器奏法ってあるんですか?どういう奏法ですか?
>バウムガルトナー&ルツェルン弦楽合奏団の「ブランデンブルク協奏曲」新盤
これは昔からの名盤ですね。僕も好きです。ブラームスの方は未聴なので聴いてみたいですね。

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もっち

問い続けることでヒントが見えてくることはある気がします。
今は売れているものをより売るために、売れないものからヒントを得ようとしています。

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雅之

>へぇ、チェコの弦楽器奏法ってあるんですか?どういう奏法ですか?
大変申し訳ありません、当人にとって常識と思い込んでいることに対する問いには、返答に苦慮してしまいます。
とりあえず、「オタカール・シェフチーク」をキーワードに、ふたつのサイトをご紹介いたしますので、それを手がかりに、いろいろ研究してみてください。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%95%E3%83%81%E3%83%BC%E3%82%AF
http://www.geocities.jp/shumijinn/violindesi.html
とにかく、奏法の系譜は「親子関係」同様、重要です。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは、ありがとうございます。
演奏するという行為に疎いものですから、あまりに素人的な質問になってしまったようで失礼いたしました。確かに奏法の系譜というのは重要なんでしょうね。おざなりにしておりました。全くの知識不足です。ご紹介いただいたページでまずは勉強させていただきます。

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