オルガン交響曲

saint_saens_organ_detoit_mso.jpg第32回「早わかりクラシック音楽講座」の日。
サン=サーンスとは実に奥深い作曲家だということがあらためてわかった。今回メイン・テーマにした交響曲第3番「オルガン付」などは結構誰もが知っている楽曲なのかと思っていたが、さにあらず。彼の作品の中でおそらく最も有名であるだろう組曲「動物の謝肉祭」にしても、飛び切りポピュラーな「白鳥」以外は皆さんほとんどご存知じゃなかった。それでもじっくりその音楽に耳を傾けると皆かっこいいという。
そう、かっこいいのである。しかもいわゆる形式をしっかりと遵守する中にスパイスをしっかりと効かせ、保守派の頑固親父というレッテルを貼られながらも、実は新しい試みを常にしているという「革新的」なところももちあわせていたというところが堪らない。

あいだゆが最後に面白いことを言ってくれた。彼女がサン=サーンスの音楽に聴くイメージというのは、1曲の中にいわゆる古典的な形式からはみ出す瞬間とその枠の中に埋没する瞬間が錯綜する感じなのだと。しかもはみ出したときにかっこよさを感じ、枠に近づくと「ちょっと惜しい」という感じになるのだという。うん、言い得て妙。その上で、彼女の意見では、古典的な枠、軸をしっかり持ちながらも枠からはみ出すような音楽が今の時点で理想的だということである。うーん、そんな音楽があるのかな・・・。ひょっとするとブルックナーの音楽はそういうものかな。ワーグナーもそうかもしれない。19世紀後半の革新的な音楽を生み出していった芸術家で、今の時代にも名を残している人たちの音楽は概してそういうものかもしれない。

最後に、先日も言及したサン=サーンスの言葉を紹介した。こういう言葉は真に自信を持つ人にしか言えないものだろう。幼い頃から賞賛を浴び、常に評価され、結果として社会的にもある程度の地位に就いていた巨匠ゆえの揺るぎない信念。立派である。

今日は、チョン・キョンファの弾く序奏とロンド・カプリチオーソを聴いた。デュトワの指揮する「動物の謝肉祭」も聴いた。オルガン交響曲はデュトワ盤とミュンシュ盤(第1楽章のみ)を。やっぱりかっこいい。ますますサン=サーンスの音楽が好きになった。中でもデュトワ&モントリオール響によるオルガン・シンフォニーは絶品だ。

サン=サーンス:交響曲第3番ハ短調作品78「オルガン付」
ピーター・ハーフォード(オルガン)
シャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団

※この音盤は以前のブログでも採り上げた。

何度も言う。とにかくかっこいい、そして美しい。管弦楽にオルガンの音が交じり合う瞬間の地響きのような何ともいえないHolyな恍惚感が後を引く。


3 COMMENTS

雅之

おはようございます。
御紹介のデュトワ指揮「オルガン付」は、名盤かつ定盤ですね。「動物の謝肉祭」や「死の舞踏」も聴けるのがお得ですし・・・。ミュンシュ盤も昔から定評がありますよね。また、チョン・キョンファの弾く「序奏とロンド・カプリチオーソ」もいいですよね。
あと、私のおススメのサン=サーンスの有名曲では、ヴァイオリン協奏曲第3番を挙げておきましょう。サラサーテのために書かれた曲ですが、グリュミオーの演奏が飛切りおしゃれで粋です。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1071242
私がサン=サーンスを素晴らしいなあと思うのは、私生活を作品に持ち込んだ形跡をほとんど見せていないこと。奥さんと別離状態になったり二度も子供と死別したり、彼の人生もいろいろ苦労も多かったと想像しますが、作品はいつもおしゃれで粋で洗練されています。この仕事への姿勢は私も見習いたいし、大いに共感するところです。どんなに辛いことがあっても、おくびにも出さず、かっこよくおしゃれに洗練された音楽を提供する・・・、そこに見えるのは宮大工にも通じる、最高度な職人としての技とプロ意識です。頑固でシャイな性格も、じつに職人的です。
そこに自然科学などの豊かな教養が結び付いていたのが彼なのですから、「下世話な世評やゴシップネタなど、どうでもいい」という境地になれたのは、よーく理解できます。
「好きだの嫌いだの、恋だの愛だの、大のおとながワーワーわめくのは、ほんとの愛じゃないよ」そんな境地ですかね?

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
僕が持っているデュトワ盤は20年近く前に購入したものえ、「オルガン付」1曲しか収録されていないものです。「動物の謝肉祭」と「死の舞踏」に関しては「ファエトン」や「オンファールの糸車」などのカップリングで発売された初期盤を所有しています。
ヴァイオリン協奏曲第3番いいですね。グリュミオー盤は未聴ですが。
>私がサン=サーンスを素晴らしいなあと思うのは、私生活を作品に持ち込んだ形跡をほとんど見せていないこと。
確かに!!講座のためにいろいろと勉強してみると、この作曲家の偉大さがよくわかりました。雅之さんご指摘の点はごもっともです。
>「好きだの嫌いだの、恋だの愛だの、大のおとながワーワーわめくのは、ほんとの愛じゃないよ」そんな境地ですかね?
まさに!

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アレグロ・コン・ブリオ~第5章 » Blog Archive » 何事も知ることは大事だけれど

[…] モーツァルト同様、幼少の頃から音楽的才能に長け、神童として扱われたサン=サーンスの音楽は一般的に保守派と認知されるが、少なくとも素人耳には第1番のヴァイオリン・ソナタなど挑戦的なフレーズも頻発するし(オルガン交響曲同様2楽章制で、しかもそれぞれの楽章は2部制になっている点も見逃せない。第2楽章第2部なんて十分アヴァンギャルドな側面も見えるし)、決して単なる保守的浪漫主義的音楽ではない。それに、レオナルド・ダ・ヴィンチのように詩、天文学、数学、絵画などあらゆるジャンルに才能を持ち精通していたあたりはモーツァルト以上でもあり、そういう能力が逆に足枷(枠組み)と化し、ある意味保守的にならざるを得なかったともいえる(何事も知ることは大事だけれど、何でも知ってわかり過ぎるというのも頭が固くなってしまっていけない)。 […]

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