横山幸雄ショパン完全奏破コンサート

30年前の僕だったらきっと卒倒していただろう。
横山幸雄が昨年に引き続き、ショパンのソロ作品全曲を1日にして奏破するという勇猛果敢なコンサートに行った。朝8:00~翌深夜2:00までという聴衆側も勇気と体力を強いられる驚異的時間。日中は研修だったため、20:20~第3部パート3からの参戦。ショパンの作品を基本的に時間軸に沿って演奏するという試みゆえ、僕が聴けたのは作品38のバラード第2番(1840年)以降の楽曲全て。そう、最後の10年間の全ソロ曲を順番に聴けたということ。

ともかく横山氏の強靭な体力と精神力に脱帽。聴く側の方が余程疲れを見せるくらい、ステージ上の本人は一切の「緩み」を見せず、一気通貫にひとつひとつの作品を、それも相当なスピード、テクニックで表現してゆく。ジョルジュ・サンドとの恋が最高潮の時期に生み出された作品からは「高貴さ」と「愛」と、そして「自信」に漲る作曲家の精神性が手に取るようにわかる。一糸乱れず、ただただ音楽だけがそこに現出する。そしてサンドとの不和、死を目前にした作曲家の心の乱れと孤独感を表す晩年の諸作。

全体を通して僕が感じたのは、やっぱりショパンの本質は「マズルカ」にあることが間違いないということ。全時代を通じて、「マズルカ」には哀愁と希望と、人間感情の全てが含まれる。ショパンの絶筆となった作品68-4の涙なくしては聴けない心情吐露。今回の演奏会のすべてについては大満足だが、もしも欲を言わせていただけるなら、最晩年のショパンの力ない弱々しさを、あるいは故国に対する寂謬感を表しきれていなかったところかもしれない。さすがに10数時間を、わずかの休憩をとりながらのステージゆえ、最後の方は演奏者もエネルギー不足に陥っていた感を否めないものの、そこはやっぱり強者。英雄ポロネーズなど、相当な速さであっという間に弾き切ったところは見事だし、バラードの4番やオーラスの幻想ポロネーズも最高!もちろん舟歌も僕好みの速めのテンポで好感の持てる演奏だった。しかし、マズルカについては少々明る過ぎた、元気過ぎた・・・。
まぁ、重箱の隅を突っつくような真似は止めよう。良かった、予想以上に良かった。作品64の3つのワルツも本当に素敵だった。ソナタの3番も1年前に聴いたポゴレリッチの演奏とは正反対の正当な演奏で、やっぱりショパンはこうでなくてはという気持ちにもさせられたし・・・。非の打ち所のない5時間半。感謝・・・。

横山幸雄ショパン・ピアノソロ完全奏破全212曲・世界記録更新チャレンジコンサート
2011年5月3日(火・祝)8:00~26:00
東京オペラシティコンサートホール

4日間の「ストレスゼロ・本当に使えるNLP集中講座」が終わった。さすがに疲れた。これから復習し、次回講座に向けての宿題も多々ある。気合いを入れて頑張ろう。
本日のコンサートは、先日M社長からお誘いいただいたもの。でなければ知らなかったゆえ、教えていただいたことに本当に感謝。ちなみに、小林秀雄がひとりの作家を知りたいなら全作品をともかく読めとどこかで書いておられたが、音楽家を知りたいなら全作品を聴けということに通じる。それは僕のポリシーでもある。ショパンという不世出の作曲家の30歳以降の全作品を一瞬にして聴けたことにあらためて感動、感謝。

さすがに疲れたので終了後、拍手もほどほどに会場を後にした。舞台上ではギネスの表彰式の後、アンコールの演奏が行われた模様(どうやら演奏者本人が作曲した「アヴェ・マリア」という作品らしい)。それが見れなかった、聴けなかったのは残念だが、今の僕にとっては十分。しばらくショパンは聴かなくて良いかも。


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