赤いカプセル

bartok_emerson_q.jpg映画「マトリックス」でモーフィアスから差し出された赤いカプセルと青いカプセル。「真実を知りたければ赤いカプセルを、知りたくなければ青のカプセルを選べ」と迫られたネオは躊躇なく赤いカプセルを飲む。我々が住むこの世界は全て「幻想」であることを知り、世界を救うために戦うことを決意したネオ。赤を選択するには「勇気」がいる。いや、というより「覚悟」がいる。「覚悟」とは、仏教用語では「迷いを脱し、真理を悟ること」。

僕は子どもの頃からどちらかというと「逃げ癖」があった。いざとなったら「逃げればよい」と思っていたわけでは決してないが、とにかくどうすれば「戦わずに」済むのかばかりを考えていたような気がする。面倒なこと、辛いこと、などなど、ぶつかることより見なかったことにすることが多かった。根がビビリだということもあるが、そうやって安易に生きてきた。あるとき、あることをきっかけに自分のその癖が自信の成長にとっては良いものではないことに気づいた。逃げないこと。退路を断ち、勇気を持って行動すること。信念を貫くことがどんな時も重要なんだということがそのときよくわかった。

「赤いカプセル」を飲んだつもりで、実は飲んでなかったという人は多い。僕もそうなのかもしれない。そろそろかな・・・。

日本列島を寒波が襲う。昨日の予報では積雪の可能性ありということだったが、朝起きてみるとすっきりとした晴天だった。それでも空気は相当に冷たい。コートを羽織って重装備をしても、戸外を歩くと底冷えがする。室内で暖房をかけていても足元は冷蔵庫のようだ。まさに冬到来という印象だが、寒さが堪えれば堪えるほど春のありがたみがようわかるわけだから、冬の後には必ず訪れる明るく暖かい春(未来)に希望をもってがんばろう。

バルトーク:弦楽四重奏曲全集
エマーソン弦楽四重奏団

バルトークの6つの四重奏曲はそれぞれが個性的で、しかも相当な重みを持つ音楽だから、そうそう連続で全てを聴き通すのは困難を伴うのだが、このエマーソン弦楽四重奏団盤はことのほか耳に心地良く、あっという間に全曲を聴き終えることができる。もちろん凡庸な演奏では決してない。機械的なものでもない。奏者それぞれの主張がまろやかにブレンドされ、聴き手を純粋にバルトークの世界に誘ってくれる。小難しいことを考えず、一切抵抗せず、ただただバルトークの音楽を無心に聴けば、「開けてくる」のである。ネオがカプセルを選ぶ時ほどの勇気を必要とせず、我々にバルトークの「真実」を知らしめてくれる。うーん、わかったようなわからないような曖昧な比喩だ。無理やりのこじつけなり(笑)。

春のような暖かいバルトーク・・・。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
バルトークの音楽が持つ「熱」とは、民族音楽と西洋クラシック音楽理論を組合せ、矛盾で軋んだ時の火が出るような「摩擦熱」を結構利用していると感じています。
>「逃げ癖」があった。
苦手なことに暴走して突っ込んでいくより、ブレーキをかけたほうが得策な場合も多いのでは? その場合、ハイブリットカーや電車に使用されている「回生ブレーキ」
http://www.weblio.jp/content/%E5%9B%9E%E7%94%9F%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%AD
ように、ブレーキをかけたときモーターを発電機として使い、マイナスのエネルギーをプラスのエネルギーに変換して利用すればいいと思います。
クラシックもロックも(宗教も)、出来立てホヤホヤの時は「摩擦熱」を直接プラスの爆発エネルギーに変換していたのでしょうが、周囲の理解や慣れ、許しにより摩擦が少なくなると同時に、無闇に過激にならない、美しく無害なものに変質していきました。
エマーソン弦楽四重奏団のバルトークやブーレーズ指揮のバルトークは、ハイテク技術で「回生ブレーキ」をも駆使し、効率的にエネルギーに変換しているハイブリット車のような快適な乗り心地です。加速性能も抜群で、高速でも滑らか、静かです。
でも、本当にそれだけが「車の魅力」なんでしょうか?

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
「回生ブレーキ」とは面白い喩えですね。まさに「ブレーキをかけたときモーターを発電機として使い、マイナスのエネルギーをプラスのエネルギーに変換して利用すればいい」のですが、若いうちは「苦手」なことにもチャレンジして、スピンでもクラッシュでも何でも体験した方が良いように今となっては思うのです。その意味では僕はあまりに「良い子」過ぎたように思います。踏み外しのないありきたりの安全運転をする指揮者でもピアニストはやっぱりつまらないですよね。
エマーソンSQやブーレーズのバルトークはおっしゃるとおりですね。決してそれだけが「魅力ではない」と僕も思います。が、表現のひとつの方向性を表してはいると思います。
あとは好き嫌い、趣味の問題ではないでしょうか。時折聴く「耳に心地良い」バルトークとしては「あり」だと僕は思います。

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