音盤への愛情

brahms_horn_trio_ashkenazy.jpg昨日、プリンターが突然壊れた。もらい物の中古品で、しかもちょうど3年使ったことになるからそろそろ潮時だったことは確かである。ちょうどこの1週間は引越しの流れで不要なものは捨てた。部屋が見違えるように明るくなったことと合わせてなのか、「過去の遺物」がことごとく潰れてなくなってゆく。そうなると気持ちも新たに、自ずと意識も次のステップに向かうようになるのだから面白い。余計な執着は捨て、軽くなろうと決めた。

といっても、大事に買い集めてきたCDばかりは捨てられない(苦笑)。この煩悩が支配できればより一層成長するのだろうが、そのあたりはまだまだ凡人、いつ何時聴きたくなるかわからないこともあってかひとつひとつ大事にしたいという気持ちが相変わらず。

いや、待てよ、大事にするなら執着じゃなくて愛情なのだから良いのでは?使ってない物、あるいは要らない物を溜め込むことが良くないのである・・・、などと自分に言い聞かせながらひとり納得する。

ただし、先日のコメント欄での話題ではないが(しつこいなぁ・・・笑)、1枚1枚の音盤への愛情はより深いものにしたい。大事に繰り返し聴き込み、かつてのように隅から隅まで、演奏の細部まで憶えているようなそんな付き合い方を取り戻したいものだ。

ともかく、機械というものいずれは壊れるもの。どんなものにも寿命があるのだから、これまで使っていたプリンターに「ありがとう」と感謝をし、次の新しいプリンターにも「これからよろしく」とお願いしておこう。

ブラームス:ホルン三重奏曲変ホ長調作品40
ウラディーミル・アシュケナージ(ピアノ)
イツァーク・パールマン(ヴァイオリン)
バリー・タックウェル(ホルン)

若い頃、何度も繰り返し聴き、当時は相当な思い入れのあった音盤だが、もう長らく取り出すことなく棚の奥にしまい込んでいたものである。ブラームスらしい、若い息吹の中にも、熟練の渋さが垣間見える珍しい編成のトリオ。特に第3楽章は、数ヶ月前に亡くなった母への追悼の想いが託された神々しい音楽である。ホルンとヴァイオリンの掛け合いは、母と自身の「ストローク」を表すのか、深沈たる響きが一層の悲しみを誘う。

アシュケナージのピアノは相変わらず上手い。パールマンとのコンビではいくつか名演を残しているが、同盤に収録されているフランクのソナタとこのトリオは中でも最高の出来ではないだろうか。


4 COMMENTS

雅之

おはようございます。
>といっても、大事に買い集めてきたCDばかりは捨てられない(苦笑)。この煩悩が支配できればより一層成長するのだろうが、
いや、岡本さんの場合、大量のCDや書籍での知識の蓄積がお仕事に何らかの形で役に立っているから、全然後ろめたいことはないのですよ。考えてみれば、我々と同世代の極めて博学な評論家で知られる片山杜秀さんや、もっと言えば、知の巨人、立花隆さんの所蔵されている膨大な書籍や音盤の量に比べたら、まだかわいいものかもしれませんね。
※お薦め本
ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術  (立花隆 著  文春文庫)
http://www.amazon.co.jp/%E3%81%BC%E3%81%8F%E3%81%8C%E8%AA%AD%E3%82%93%E3%81%A0%E9%9D%A2%E7%99%BD%E3%81%84%E6%9C%AC%E3%83%BB%E3%83%80%E3%83%A1%E3%81%AA%E6%9C%AC-%E3%81%9D%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%BC%E3%81%8F%E3%81%AE%E5%A4%A7%E9%87%8F%E8%AA%AD%E6%9B%B8%E8%A1%93%E3%83%BB%E9%A9%9A%E7%95%B0%E3%81%AE%E9%80%9F%E8%AA%AD%E8%A1%93-%E6%96%87%E6%98%A5%E6%96%87%E5%BA%AB-%E7%AB%8B%E8%8A%B1-%E9%9A%86/dp/4167330156/ref=sr_1_8?ie=UTF8&s=books&qid=1269895587&sr=1-8
上記サイトでおひと方のレビューアーも書いておられますが、立花さんが《「捨てる技術」を一刀両断した巻末コラム》は痛快で、一読の価値がありますし、勇気付けられますよ(笑)。但し、近い将来またモノが増えた時、この巻末コラムを楯に取って奥さんに反論などなさりませぬよう、くれぐれも注意です。「コレクターは家人を敵に回してはならない」、これだけは鉄則です(微笑)。
いろいろ考えるんですが、そもそも人間の煩悩や物欲を否定したら、拡大再生産の資本主義は成り立ちませんよね。若い世代の消費動向は、想像以上にモノを欲しがらないようですし・・・。
※参考本
「嫌消費」世代の研究――経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち  (松田久一 著  東洋経済新報社)
http://www.amazon.co.jp/%E3%80%8C%E5%AB%8C%E6%B6%88%E8%B2%BB%E3%80%8D%E4%B8%96%E4%BB%A3%E3%81%AE%E7%A0%94%E7%A9%B6%E2%80%95%E2%80%95%E7%B5%8C%E6%B8%88%E3%82%92%E6%8F%BA%E3%82%8B%E3%81%8C%E3%81%99%E3%80%8C%E6%AC%B2%E3%81%97%E3%81%8C%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E3%80%8D%E8%8B%A5%E8%80%85%E3%81%9F%E3%81%A1-%E6%9D%BE%E7%94%B0-%E4%B9%85%E4%B8%80/dp/4492395210/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1269897948&sr=1-1
「車買うなんてバカじゃないの?」というキャッチーな帯の一言、けっこうオジサン世代には衝撃的です。国内経済にとって、この若い世代の価値観の変化は深刻です。
えっ? 横で妻いわく、「CD買うなんてバカじゃないの?」 ガーン!!!・・・・・何だ空耳か(ほっ)。
気分を取り直して、
御紹介の盤は、やはり決定盤でしょう。とてもいい曲の組合せなので(ブラームスのこの作品は名作中の名作だと思います)、私も昔から愛聴していました。タックウェルは上手いですし、パールマンは音に艶がありますし、アシュケナージは音が本当に美しいですよね。フランクの演奏も正統的で大好きですが、こちらは星の数ほど他にも名盤がありますね。
ブラームスとフランクをつなぐもの・・・、岡本さん、ブラームスのオルガン曲のCDを買って聴いてみたいのですが(懲りない!! 笑)、お薦めはありますか?

返信する
岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>いや、岡本さんの場合、大量のCDや書籍での知識の蓄積がお仕事に何らかの形で役に立っているから、全然後ろめたいことはないのですよ。
ありがとうございます。そうですよね、世の中には半端じゃない専門家がたくさんいらっしゃいますからね。僕などひよっこもひよっこ、比較になりません。立花氏は昔から好きで、ご紹介の本も読みました。面白いですよね。
>「コレクターは家人を敵に回してはならない」、これだけは鉄則です
わかりました、肝に銘じます(笑)。
>「嫌消費」世代の研究――経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち
この本は読んでおりませんが、若者の価値観は我々の世代とは確実に変化しているみたいですね。
ただし、僕の場合セミナーや大学で若者と接する機会は多いですが、それほどの違和感は感じないんですよね。どうなんでしょう?
ブラームスのオルガン曲はとても良い作品ぞろいです。
僕は専らボイヤー盤を聴いて楽しんでいます。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/234969

返信する
じゃじゃ馬

お引っ越しお疲れさまでした。
ご紹介の盤、わたしも大好きなのです。
何度も何度も聴いた思い出の曲です。
フランクが好きで買ったのですが、
それ以上にホルントリオにノックアウトでした。
深い森の中にいるようなタックウェルのホルン、
艶があるパールマンのヴァイオリン、
繊細なアシュケナージのピアノ、
久しぶりにわたしも聴いてみます。
男の人ってけっこうコレクターが多いですよね~。
うちはたまたまあんまりそういうタイプじゃないし、
所蔵したいのも分かるので、わたしが怒ることはないです(笑)
おかちゃん、半端なく持ってそうですもんね。
怒られても仕方ないと思います(爆)

返信する
岡本 浩和

>じゃじゃ馬さん
お久しぶりです。
やっぱり好きですか!!僕も昔を思い出し、懐かしくなりました。
>深い森の中にいるようなタックウェルのホルン、
艶があるパールマンのヴァイオリン、
繊細なアシュケナージのピアノ、
まさに!です。久しぶりに聴くといいですよ!
>怒られても仕方ないと思います(爆)
僕的にはまだまだなんですが・・・(笑)。
倉庫がいくつあっても足りないくらい欲しいCDや書籍はいっぱいです(爆)

返信する

岡本 浩和 へ返信するコメントをキャンセル

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む