音楽は人間を一つにするもの

elvis_costello_the_juliet_letters.jpg「わからないね。民族性は関係ないと思うよ。聴き手の耳に入ってくるのは歌い手の感情であって、それは文化的な背景に関わらず、どの国の人でも、どの文化の人でも分かち合えるものなんじゃないかな。もちろん、世界の各地で違ったリズム、違った歌い方があるだろうけれど、それも互いから学び合うことができるからね。音楽は人間を分離するものではなく、一つにするものじゃないかと思う。・・・」

エルヴィス・コステロが2004年に来日した折にとある雑誌のインタビューで語った言葉である。インタビューでは、聴き手がコステロに対し、これまで共演したアーティストで再度競作してみたいのは誰かと尋ねた時、彼は、これまでやった全員とまたやりたいと答えた。それに対し、聴き手がさらに、音楽上で共演者との民族的な違いなどを意識したかと問いかけたところ上のような返答がなされたのである。

僕に言わせればまったくもって愚問である。少なくとも世界のトップクラスに位置するアーティストは誰しもコステロのような考えを持って音楽活動をしているのじゃないか、否、そんなことは意識せずとも当たり前のように取り組んでいるのではないかと思うからだ。僕がいろいろなジャンルの音楽、音盤を採り上げ、ほぼ毎日のようにこのブログを書き続ける理由は、まさに「音楽は人間を分離するものではなく、一つにするもの」だという想いからだ。残念ながら僕は楽器を操ることができない。ならば、僕なりの観点で、そして僕なりの方法で音楽の素晴らしさを伝えると同時に、皆をつなぐことができたらいいなと考え、ちょうど3年前にスタートしたのである(そういえば、9日で4年目に突入したことになる)。

トップ・スターの言葉は含蓄に富む。ともかく良い音楽を聴き続けたい、追い続けたいとあらためて思った。

ところで、ロック音楽には”Yesterday”、”Eleanor Rigby”というクラシック調の美しい名バラードがある。いずれも40年以上前にThe Beatles(というよりPaul McCartney)によって生み出された音楽だ。ロックの世界に弦楽四重奏を最初に導入したのはThe Beatlesなのかどうか、そのあたりの詳細はよくわからないが、ロック・バンドがクラシック楽団と共演するなどという(当時としては)斬新なアイデアは、コステロが言うように「世界の各地で違ったリズム、違った歌い方があるだろうけれど、それも互いから学び合うことができる」ような感性をもった人たちだからこそ閃き為せた技なのだろう。そのあたりは当然George Martinに依るところも大だと思うので、この名プロデューサーの知識の深さと感性の鋭さには今更ながら畏れ入る。

Bill Evansの名曲を弦楽四重奏に編曲してアレンジしたKronos Quartetの音盤に刺激され、ロックの世界に新たな地平線を築き上げた名盤(だと僕は思っている)を聴きたくなった。

Elvis CostelloがThe Brodsky Quartetと共演した”The Juliet Letters”。タイトル通り、シェイクスピアの名作「ロメオとジュリエット」が下敷になっているようだが、あくまでコステロのオリジナル作品。1分にも満たない序曲”Deliver Us”の悲しげながら美しい旋律から早くも引き込まれ、1時間少しの物語が、コステロの七色の歌声とともにあっという間に過ぎゆく。ブロドスキーの繊細で、しかも骨格のしっかりした演奏が色を添える。ジャケット写真のようにセピア色の音調の中に見事な色彩感が感じられるところがこれまたコステロらしい。

Elvis Costello & Brodsky Quartet:The Juliet Letters


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
残念ながらエルヴィス・コステロのことも、あまり詳しくはないです。
ご紹介のCDも、未聴です。
私の場合、彼の歌で思い出深いのは、映画「ノッティングヒルの恋人」での、シャルル・アズナヴール作詞の”She”でした。
http://www.youtube.com/watch?v=RIwOxAgKBgo
彼女、
忘れることのできないその面影
それは歓び、あるいは痛み
僕の宝物、それとも後悔のなごり
あの夏の日の歌
それとも秋が運んでくる冷気
あるいは一日という日に
起こるいろいろなこと
彼女、
美しき女、それともけだもの
飢え、それともごちそう
これからの日々は天国、それとも地獄
彼女、
それは僕の夢を映し出す鏡
川辺にきらめく微笑み
だけど心の奥底は誰にも見せない
彼女、
満ち足りて幸な姿
自信と誇りに満ちたその瞳・・・けれども、
涙は誰にも見せない
彼女、
永遠など叶わぬ儚い愛かもしれない
でも、思い出は生き続ける
僕は死ぬまで君をずっと忘れないだろう
僕の未来は彼女しだい
彼女、
それは僕の生きる理由
僕の心のよりどころ
どんな時も いつくしみ続けよう
彼女の笑顔も涙を拾い集め
そのすべてを僕だけの思い出にして
彼女のあとをついていこう
生きていける 彼女さえいれば
彼女、彼女 oh・・・ 彼女
映画を観た当時の、いろいろなことを思い出しました。いい歌です。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
「ノッティングヒルの恋人」良い映画ですよね。
あと、コステロの”She”はほんとに名曲です。
僕も久しぶりに聴きました。

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