ロマンス〈午後の歌のひととき〉

romance100727.jpg昨晩、海外からの突然の来訪客があった。妻のウィーン時代からの友人だという香穂里さんが、ウクライナ人の友達と事情があって宿を出なきゃいけなくなったから泊めてほしいという依頼だった。初めての人とお話をするのは基本的に好きなので、そんなことは朝飯前、ということでお招きし、妻(天野敦之氏とのコラボ企画で不在だった)が帰宅するまで3時間ほど3人で歓談した。

ウクライナ人のカテリーナさん(通称カティア)は、リンツ・テアトル・オーパーの合唱団員で、日常的にオペラを仕事にしているメゾだが、東京と大阪でそれぞれ1回ずつジョイント・リサイタルを開くということで初来日したらしい。基本的に英語は話せないということで、香穂里さんに通訳を務めていただきながら随分話し込んだ。音楽のこと、母国のこと、彼氏のこと、などなど。

カティアはもともとヴィオラ弾きだったようだ。姿勢に無理がたたって楽器を演奏できなくなったので歌に転向したとのこと。それにしてもヴィオラを辞めざるを得なくなったことは至極残念だったようで、今でも思い入れはあるそう。確かにそういうものだろう。それに、ウクライナはソ連から独立した国家だが、風光明媚で素晴らしい土地ながら、今は失業が増加、物価も高騰し、社会全体が貧乏になってしまって、かつて社会主義だった時代がよかったと年配者の多くは嘆いているという。なるほど、そういうことは教科書にも書いていないし、日本にいる限りは絶対にわかりえない事実だから、知らない国の人と話をするのはつくづく面白い。

飛行機内のエアコンが効き過ぎていたらしく、どうやらカティアは喉を痛めたようで、とはいえリサイタルで歌を披露しなければならず、とりいそぎ病院で治療、薬をいただいてきたのだと。明日、つまり本日、中野で早速リサイタルがあるからともかく調子を取り戻さないと、などと話をしているうちあっという間に午前0時を回った。ぜひリサイタルに来てくださいということで、招待券をいただき解散。充実した時間でした、ありがとう。

ということで、本日はカティアと香穂里さんのリサイタルに・・・。

~ロマンス〈午後の歌のひととき〉~
2010年7月27日(火)14:30開演
なかの芸能小劇場

栗林久華(ソプラノ)
カテリーナ・リアシエンコ(メゾ・ソプラノ)
ファッツェーニ香穂里(ピアノ)

第1部は、ヨハン・シュトラウスの喜歌劇「こうもり」~オルロフスキーのアリア『私はお客を呼ぶのが好き』を皮切りに、ファリャの歌曲集「7つのスペインの民謡」抜粋やシューマンの歌曲集「スペインの歌芝居」から二重唱、チャイコフスキーの歌曲集「ロマンス」抜粋など歌曲を中心に40分間。カティア本人も舞台上でコメントしていたが、何より母国語で歌えることでことのほか想いを込められるということで、チャイコフスキーが良かった。

15分の休憩をはさみ、第2部はオペラのアリア中心のプログラム。ビゼーの歌劇「カルメン」より『ハバネラ』でスタートし、ドリーヴの歌劇「ラクメ」より花の二重唱、ロッシーニの歌曲集「音楽の夜会」より二重唱、オッフェンバックの歌劇『ホフマン物語』から舟歌など、お洒落な選曲で40分ほどが終了した。それにしても、初めて聴いたが最後のナンバー、ロッシーニの「2匹の猫の愉快な歌」というのは猫の鳴き声で2人がハモるというもので、何とも素敵な音楽。ついでに、アンコールも1曲披露されたが、有名な曲であるにもかかわらず、曲名が出てこない・・・。あれは何だったっけ・・・??。

ちなみに、カティアの声はしっかり出ていたので、安心した。次、8月1日(日)は大阪公演のよう。頑張ってください。


6 COMMENTS

ふみ

こんばんは。
ウクライナといえば僕も留学中にウクライナ人の友達がいたんですが非常に強い愛国心(ナショナリズム)を持っていました。特に語学に関しては非常に敏感で韓国人と三人で「韓国は今や閣僚会議や大手企業などでは英語公用化が進み、幼少時代からの英語教育も急速に進化している」という話をしている時にウクライナ人の子は断固反対してましたね。やはりソ連の占領時代の悪しき思い出が残っているのでしょうね。自国の言語に相当なアイデンティティーを求めてたのが印象的でした。日本人にはなかなか理解しにくい話題だったように思います。
>雅之様
雅之様は今回の中国出張はどういった目的で行かれたのですか?海外営業志望の僕としては興味津々です。是非、御教授願えませんか?

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岡本 浩和

>ふみ君
おはよう。
海外留学の体験は、様々な国の人間と交われるところに大きなメリットがあるよね。
ウクライナ人に限らず、どこの国でも愛国心の塊のような人もいればそうじゃない人もいると思います。まぁ、右翼になれとはいいませんが、今の日本人はもう少しナショナリズムに傾いてもいいかな、と正直僕は思います。「英語公用化」というのも断固反対だなぁ、僕は。美しい日本語を忘れてはいけません。

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雅之

こんばんは。
>カティアはもともとヴィオラ弾きだったようだ。姿勢に無理がたたって楽器を演奏できなくなったので歌に転向したとのこと。それにしてもヴィオラを辞めざるを得なくなったことは至極残念だったようで、今でも思い入れはあるそう。
カティアさんのお気持ち、痛いほどよくわかります。挫折を乗り越えた人は必ず精神的に成長します。彼女の歌にも、きっとその経験が深い味わいとなって、生かされてゆくことでしょうね。
>ふみ様
今回の中国への渡航は、販路拡大と材料調達という、二つの目的がありました。
経済が成熟し少子高齢化の一途で国が莫大な借金を抱え資源もない日本は、好むと好まざるとに関わらず海外に活路を見出すしかありません。
外国人と腹を割って話し合い交渉するためには、まず日本人としてのアイデンティティーをしっかり持つことが、とても重要なことだと実感しています。日本文化の良さを日本人として恥ずかしくないくらいに、もっと深く勉強しなくてはと思ってもいます。
海外営業の志望がかなうことを、お祈りいたします。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんわ。
香穂里さんとカティアは明日大阪に向かうので、今最後の晩餐中です(笑)。雅之さんの温かいお言葉お伝えしておきますね。
ありがとうございます。

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ふみ

>岡本さん
おっ、岡本さんは英語公用化は反対だったんですね。少し意外な気がしないでもありません。僕はかなりの愛国者だと自負しておりますが英語公用化に関しては段階はあれど賛成派です。まぁ、恐らく若者はそういう意識を持った人が多いのではないかと思います。
>雅之様
中国出張について教えて頂きましてありがとうございます。実際は面と向かってもっと詳しくお聞きしたいところです。
僕も日本文化に関しては勉強しなきゃなと思いました。やはり外から日本を見ると今まで見えなかった自分や日本が見えてきますよね。

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岡本 浩和

>ふみ君
おはよう。
意外でしょ?(笑)
僕は日本語好きだからねぇ。美しいと思います。
今の世の中、英語は必須だけど、公用化する必要はないと思うんだよね。それこそ日本人としてのアイデンティティを失っちゃいけないと。

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