加納裕生野リサイタルシリーズⅢ

100924yukino_kanoh.jpgいやはや、加納裕生野の一層の可能性を感じた、そんなひとときだった。
晩年のモーツァルトはやっぱり悟っていた。K.545の第1楽章は現在だ。再現部で突如過去を振り返り、第2楽章では幼少時の思い出に引き戻されるよう。死を目前にして生まれたときのその感覚を思い出す、そんなような調べ。
ドビュッシーは新しい。未来への憧れだ。幾分速めのテンポで一気呵成に駆け抜けると思いきや中間部ではシフトダウン。それが人並み外れているのだから何とも・・・。
そして、白眉は「謝肉祭」。聴衆にわかりやすく事前に解説を交えての演奏は心地良い。シューマンの音楽は基本的に「文学」ゆえ多少の説明は必要か。その意味で「よくわかる」音楽作りだった。
アンコールは何とブラームスの間奏曲作品118-2。明るく奔放なブラームスが表現される。あくまでシューマンと関わりのあった若き日のブラームスだ。実はここで彼女の「若さ」が良くも悪くも露呈する。作品118-2は、クララへの愛の表現でありながら、老年の孤独でいじいじした作曲家の想いでもある。少々ポジティブ過ぎる、そんな風に僕には思えた。いずれにせよ年齢を重ねて、様々な体験を積んでいけばより高度な表現が生み出されるだろう、そんなことを思わせてくれた時間だった。(偉そうで申し訳ないです)

東京私的演奏協会
第25回演奏会
加納裕生野リサイタルシリーズⅢ
2010年9月24日(金)19:30開演
渋谷ステュディオ

・モーツァルト:ピアノ・ソナタ第15番ハ長調K.545
・ドビュッシー:月の光~ベルガマスク組曲
・シューマン:謝肉祭作品9
アンコール~
・ブラームス:間奏曲作品118-2

加納裕生野(ピアノ)

考え過ぎのきらいもあるが、躁と鬱が錯綜するシューマンの若き日の恋文。
クララはこういうところに惚れたのだろう・・・。

秋分が過ぎ、いよいよ肌寒さを感じる季節に突入した。
人間の多面性を感じながらも、実は人はひとつにつながっているのだということを強く感じた。いろいろな出会いがあるがすべて「ひとつ」である。

裕生野さんのロンドン時代のお知り合いが元日航の方だった。偶然居合わせた外岡君の父上も元日航なのだと。昨日の日本航空にまつわる話題とまたもやシンクロする。


10 COMMENTS

雅之

おはようございます。
>老年の孤独でいじいじした作曲家の想いでもある。少々ポジティブ過ぎる、そんな風に僕には思えた。
それはぜひ加納さんの演奏、聴いてみたかったですね。私は、いじいじしてクララに付きまとうイヤラシイおっさんのブラームスを一度ぶん殴ってやりたいくらいなんで・・・(爆)。チャイコフスキー先生の方が「女なんぞには興味がない、女より仕事だ!!」ということがはっきりとわかりやすくて、私には好ましいです。
ということで、最近は以下のような演奏も、ブラームスの心の揺れや「いじいじ」を冷たく突き放していて、とても好きになりつつあります。
交響曲全集 ノリントン&シュトゥットガルト放送響(DVD)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1379768
ブラームスにはヴィブラートもポルタメントも絶対認めん、ゆるさん!!(特に弦)。時代考証では大間違いでも、じつに快感!(笑)。
交響曲全集 マゼール指揮クリーヴランド管(CD)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/585810
マゼールは、本音では全然ブラームスに共感していないことがよくわかり、なおかつ盛り上がる演奏。少なくとも悩んではいない演奏。
ブラームスはポジティブにネアカに解釈して演奏し、白眉はシューマンのほう、そりゃ私好みの演奏会だなあ(笑)。うん、やっぱり聴いてみたかったです。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
そうです、雅之さん好みの演奏会だったと思います。
加納裕生野さんは名古屋方面でもリサイタルを開くことがあるので、機会があればぜひ聴いてみてください。素晴らしいピアニストですよ!!
ノリントンもマゼールも未聴なので何とか聴いてみたいと思います。

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雅之

昨日の話題の続きを・・・。
私が以前読んだ、横山秀夫氏の傑作「クライマーズ・ハイ」
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%82%A4-%E6%96%87%E6%98%A5%E6%96%87%E5%BA%AB-%E6%A8%AA%E5%B1%B1-%E7%A7%80%E5%A4%AB/dp/4167659034/ref=sr_1_2?ie=UTF8&s=books&qid=1285380664&sr=1-2
の中で不可解だった、地方紙・北関東新聞(モデルは明らかに上毛新聞)の、主人公や最前線の記者たちの取材魂に対する、政治的圧力が理由としか考えられない上層部の非協力的な態度や、当初の墜落地点の発表が長野県側だったという誤報の件など、いくつかの疑問が氷解しつつあります。そのきっかけを与えていただいたことに感謝しています。
※参考↓
http://wajuntei.dtiblog.com/blog-category-6.html
こういう近過去にあった歴史上の事件の暗部を知ると、わが国の、自民党政権時代の対米関係偏重の外交姿勢や、民主党政権になってからの普天間基地代替施設移設問題迷走の理由も、しっかりと理解できますね。

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岡本 浩和

>雅之様
こんにちは。
>いくつかの疑問が氷解しつつあります。
ほんとですよね。先日雅之さんからいただいたサイトやら何やら時間のある時に少し調べてみましたが驚きの連続でした。
参考サイトについてもありがとうございます、勉強になります。
>こういう近過去にあった歴史上の事件の暗部を知ると、わが国の、自民党政権時代の対米関係偏重の外交姿勢や、民主党政権になってからの普天間基地代替施設移設問題迷走の理由も、しっかりと理解できますね。
同感です。

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雅之

>同感です。
そうなんです。ですから、次のような経済コラムを読んでも、日航機墜落事故の裏側の背景を知ると、改めて「なるほど」と納得してしまうのです。
日経BP社 BPnet 森永卓郎《厳しい時代に「生き残る」には》
〈薄気味悪い「普天間」論議。基地を拒否した「フィリピン方式」は不可能なのか。鳩山首相は米国を恐れずに「すべてをオープン」にせよ。〉(2010年 2月2日付)より後半(P8~)
http://www.nikkeibp.co.jp/article/sj/20100202/208439/?P=1
・・・・・「対等な関係」を志向した政治家が次々に失脚
 普天間基地の移設先についてはひとまずおいて、私にはどうしてもわからないことがある。それは、盧武鉉前大統領が退任後、不正資金疑惑に問われ、逮捕目前に自殺した理由である。
 日本でも、「米国と対等な関係」を目指した権力者が、なぜか失脚している。少なくとも、事実関係を列挙すると、そのように見えてくるのだ。
 有名なところでは、アラブ諸国と独自外交を進めた田中角栄元総理が、在職中にロッキード事件で逮捕されて失脚した。
 また、米コロンビア大学での講演で、「米国債を売りたいとの誘惑にかられたことがある」と述べた橋本龍太郎元総理は、中国人女性とのスキャンダルによって失脚している。一部には、その死因についても疑問視する声がある。
 現在も、米国と対等な関係を主張する小沢民主党幹事長が、よってたかって引きずり下ろされそうになっている。
持論の「常駐なき安保」を封印した鳩山総理
 正直言って、どうも私にはよくわからない。
 指導者たちは、単に米国に冷たくされたり、嫌がらせをされたりすることを恐れているのではなく、実際に具体的な「恐怖」があるのではないか。
 もしそれが事実だとすると、私が知りたいのは、日本が米国に対して「グアムに帰れ」と言ったとき、米国がどのような反撃を匂わせているのかということである。
 そもそも納得いかないのは、あれほど「常駐なき安保」を主張していた鳩山総理が、コロッと態度を変えたことだ。しかも、そのことばを「封印する」とまで言っている。
 この裏にはなにがあるのだろうか。
鳩山総理、あなたはいったい何を恐れているのか
 「いったい、あなたは米国に何を言われているんですか。なぜ、封印したんですか」と、私は鳩山総理に聞きたい。
 この不自然さは誰でも思い当たりそうなものだが、テレビも新聞も、まったくそれに触れようとしない。
 はたして、米国は鳩山総理自身のスキャンダルを握っているのか、それとも日本国民が知ったらあっと驚くような恐ろしい事態が隠されているのか。
 私が知りたいのは、鳩山総理がいったい何を恐れているのか、そのことだけなのである。・・・・・・
※その後の鳩山政権と普天間基地問題の顛末については、岡本さんよくご存じのとおりです。
米国や中国などと日本との関係を裏側まで読み解くことは、決して他人事ではなく、ビジネスでも、私的な海外渡航でも、政治家を選ぶのでも、これからどう行動するかという意味において、私達日本国民ひとりひとりにとっても、日本の未来にとっても、極めて重要なことなんじゃないでしょうか。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
>次のような経済コtラムを読んでも、日航機墜落事故の裏側の背景を知ると、改めて「なるほど」と納得してしまうのです。
ほんとですよね。誰でもおかしいと思いますよね。
>米国や中国などと日本との関係を裏側まで読み解くことは、決して他人事ではなく、ビジネスでも、私的な海外渡航でも、政治家を選ぶのでも、これからどう行動するかという意味において、私達日本国民ひとりひとりにとっても、日本の未来にとっても、極めて重要なことなんじゃないでしょうか。
まったくもって同感です。
この国はやっぱりおかしくなっています。
しかしながら、世の中のしくみを一度リセットしないとどうにもならない、そんなような状況ですよね・・・、悲しいかな。

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ゆきの

岡本さん!先週はお忙しい中コンサートにお越し下さりありがとうございました。そして、こんなふうに批評まで書いてくださって嬉しいです。ブラームスはもっと深みのある演奏がこれからできるように、もっと勉強して頑張りたいと思います。これからもどうぞよろしくお願い致します!

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岡本 浩和

>ゆきの様
こんにちは。
こちらこそ素晴らしい演奏をありがとう。
ちょっと偉そうな批評だよね。申し訳ないです。
また伺わせていただきます。

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ゆきの

偉そうなんてとんでもないです!色々ためになりますので、これからもバシバシ?!お願いします!(笑)

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