ランパル、ラスキーヌ&パイヤールのモーツァルトK.299(1964録音)ほかを聴いて思ふ

伝家の宝刀。
モーツァルトは、そもそもフルートもハープも苦手な楽器だったのだという。パリ時代、母の死の年に生み出された協奏曲は、まさか身内の不幸を予想だにしなかったのだろう、いつどんなときのモーツァルトより明るい光に満たされる。何よりランパルのフルートとラスキーヌのハープの、得も言われぬ綴れ織り。

まったく、世界中にパリみたいなところはありません。この地の音楽のことをこう言ったからって、ぼくが途方もないことを言っているなどと、お考えになっては困ります。フランスに生まれた人でない限り、だれにお聞きになってもかまいません。耳をかすに値する人だったら、だれでも同じことを言うでしょう。今ぼくはここにいるのです。我慢しなければなりません。
(1778年5月1日付、父レレオポルト宛)
柴田治三郎編訳「モーツァルトの手紙(上)」(岩波文庫)P149

モーツァルトの職探しの困難は尋常でなかった。
そこへ母の急逝である。

最良の友よ!
友よ、私と一緒に悲しんで下さい!今日は私の生涯でいちばん悲しい日でした。これを書いているのは、夜中の2時ですが、どうしてもあなたに言わなければなりません。母は、私の愛する母はもういないのです!神がお召しになりました。神が母をお望みになったのです。
(1778年7月3日付、ヨーゼフ・ブリンガー神父宛)
~同上書P161

信仰篤いモーツァルトの魂の叫び!
典雅で大らかな響きには、苦労を横に置いてのモーツァルトの創造力の自由な飛翔が感じとれる。第1楽章アレグロ主題の美しさ!また、第2楽章アンダンティーノの静かな祈りの念。そして、第3楽章ロンドのカデンツァの愛らしさ!

モーツァルト:
・フルートとハープのための協奏曲ハ長調K.299(297c)(1964録音)
・クラリネット協奏曲イ長調K.622(1963録音)
ジャン=ピエール・ランパル(フルート)
リリー・ラスキーヌ(ハープ)
ジャック・ランスロ(クラリネット)
ジャン=フランソワ・パイヤール指揮パイヤール室内管弦楽団

一方、死の直前に生み出された、その時点では自身の死を予想すらしなかったであろう傑作クラリネット協奏曲。第1楽章アレグロの、何と透明で抜け切った大らかな主題!

オペラから帰ったらお前の手紙を見つけたので、とても楽しく嬉しい気持だった。オペラは、土曜日はいつでも郵便日でだめな日なのに、大入り満員で、例によって喝采とアンコールのうちに上演された。明日も上演されるが、月曜は休み。だからズュースマイアーがシュトルを連れて来るのは、あらためて第1回の公演が行なわれる火曜日になる。第1回の、というのは、多分また何度かつづけて上演されるだろうからだ。
(1791年10月8・9日付、妻コンスタンツェ宛)
柴田治三郎編訳「モーツァルトの手紙(下)」(岩波文庫)P207

何と生気に満ちた言葉であろうか。とてもこの2ヶ月後に生を終える人の手紙とは思えない。第2楽章アダージョは屈指の名演奏。巷間想像される「死の淵の諦念」溢れる彼岸の音楽というより、未来への望み満ちる此岸のそれ。ランスロのクラリネットは温かい。ここには愛する妻への感謝の念がある(むしろ終楽章ロンドに悲しみを見出すのは僕だけだろうか)。

 

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