感謝を捧げながらバッハの音楽に虚心に向かう

20101120moritake.jpgJR中央線三鷹駅。その北口は武蔵野市だが、27年前、初めて上京した時に1年間住んだのがこの武蔵野市だった。三鷹駅北口に降り立ったのはおそらくその時以来のように思う。30年近い時を経ると町並みや風景も随分変わる(相当風化した記憶を辿ってのことだから、極めて曖昧なのだが)。それにしても、当時はあまり意識していなかったせいか気がつかなかったのだが、都心から少し離れているせいか空気も良いし、駅から数分の道のりがとても気持ち良い。それに、昔と違って町の雰囲気が相当垢抜けたようで、駅前のイルミネーションも様になっているし、予想以上に洒落たビルが建ち並ぶ。

武蔵野市民文化会館には初めて行った。文化振興の意識が高いのだろうか、所沢のMUSE同様、ここでは著名なアーティストのコンサートが信じられないような価格で提供されることが多く、以前から気になっていた。行ってみて納得。周囲の環境も良いし、実際にホールの音響も抜群、都会の喧騒をしばし離れてゆったりと音楽に浸れるところがとにかく気に入った。

森武靖子 J.S.バッハオルガン作品全曲演奏シリーズ第8回
新発見の若きバッハのオルガン作品
1984年発見「ノイマイスター・コラール」BWV1090~1120
2008年発見「主なる神、我らの側にいさまずして」BWV1128

2010年11月20日(土)19:30開演
武蔵野市民文化会館小ホール

休憩を挿んでちょうど90分。パイプ・オルガンのピュアな音にただただ無心に浸るという時間。一つの楽器が、あるときは横笛のようにふくよかな響きを表出し、あるときは大オーケストラの如くの轟音を発する。墨絵のような濃淡を、よくもあれほど自然に表現できるものだと感心しながら、微かな自然の音に耳をそばだて、大宇宙の鳴動に身体を預けることで一切が「無」になり、日常の疲れがいっぺんに吹き飛ぶよう。今日、その場で僕は初めてこれらの楽曲に触れた。特に、最後に演奏された、バッハが10代~20代前半に書いただろう(有名な「トッカータとフーガニ短調」や「小フーガ」が書かれたであろう、アルンシュタット時代か)と考えられているコラール幻想曲「主なる神、我らの側にいさまずして」は、驚くばかりのエネルギーをもって僕の前に現れた。まさに、アシュケナージのいう「大自然の恵み」、「感謝を捧げながらバッハの音楽に虚心に向かう」、その言葉を思い出しながら、森武靖子さんの奏でるオルガンの音色に身を預けさせていただいた。余計な装飾を一切排した、ただバッハの音楽と対峙する、大袈裟だが、陶酔の90分だった(もちろんアンコールもなし)。

良い気分・・・。


4 COMMENTS

雅之

おはようございます。
パイプ・オルガンのコンサートに行かれたこと、羨ましいです。
バブル後に建てられた各地の立派なホールには、パイプ・オルガンの名器が設置されているところが多いですが、もっともっと有効に活用して欲しいですよね。
今朝は、
http://classic.opus-3.net/blog/cat29/post-575/#comments
の姉妹コメントということで・・・。
パイプ・オルガンのパイプは青銅(銅と錫の合金)です。梵鐘も教会の鐘もそう(銅鐸もそう)。
※参考サイト
http://www2.odn.ne.jp/~har61850/neiro.htm
人類の、金属使用および宗教の歴史に興味は尽きません。楽器の素材・・・、スチール、青銅、真鍮(銅と亜鉛の合金、=ブラス)、銀、金、プラチナ(フルートなど)・・・、やはり岡本さんがおっしゃるように、「音楽の発展というのは産業の発展とまさにリンクしている点が見逃せません」。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
本日も貴重なコメントありがとうございます。
いやぁ、勉強になりますね、このブログは・・・(笑)。

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雅之

こんにちは。
大変失礼しました。寝ぼけて早とちりをしましたので、本日も訂正コメントです。
× パイプ・オルガンのパイプは青銅(銅と錫の合金)です。梵鐘も教会の鐘もそう(銅鐸もそう)。
この部分を、下のように訂正します。
○ パイプ・オルガンのパイプは錫と鉛の合金(つまり、低融点合金「はんだ」と同じ)です。一方、梵鐘や教会の鐘、シンバルや銅鑼(銅鐸もそう)は青銅(銅と錫の合金)。
ウィキペディア「錫」の項によりますと、「ローマ帝国領時代から中世・近世にはイギリスのコーンウォールが世界有数(少なくともヨーロッパ最大)のスズの産地で、イギリスはヨーロッパ中にスズを輸出していた。しかし産業革命によりスズの需要が急増すると、コーンウォールのスズは枯渇した」とのことです。
※参考サイト
http://homepage3.nifty.com/sugar-tr/curiosityA.htm
http://macorgan.exblog.jp/10607674/

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