歌劇「ゲノフェーファ」、そして「シャイン・ア・ライト」

schumann_genoveva_masur.jpg来年2月5日(土)に新国立劇場で上演されるシューマンの唯一の歌劇「ゲノフェーファ」のチケットが届いた。何と本邦初演なのだと。知人のお嬢様がタイトルロールをこなされるということと、折しもロベルト&クララ・シューマン熱冷めやらぬ時期にお誘いを受けたものだから、何が何でも馳せ参じようとスケジュールをフィックスした次第。
ところが、件の歌劇に関しては音楽を聴いたこともなければ観たこともないし(序曲のみはもちろん知っていたが)、あらすじがどういうものかについても全く知らなかった。急ぎインターネットや文献で調べると同時に音盤を手に入れ、暇を見つけて繰り返し聴いているが、これが実にすばらしい。このオペラが作曲されたほぼ同じ時期にはワーグナーが「ローエングリーン」を創作していた時期に重なるし、舞台も同じブラバント王国ということでついつい比較の対象になってしまいそうだが、ワーグナーの方が150年以上を経た現代でも世界中のオペラ劇場で上演されているのに対しシューマンの方はほとんどと言って良いほど知られていないもの。一般的なオペラの概念でいう華麗なアリアや物語の起伏に確かに欠けるところはあるものの、音楽は首尾一貫して晩年のシューマンの何とも不安定で翳りのあるもので(それがシューマン好きには堪らない)、シューマン好きはもちろんのことある程度の音楽愛好者なら飛びつくだろう要素を持っているところが至極気に入った。

公演までにはまだ時間があるから、ある程度は理解して楽しめるよう繰り返し聴き続けようと思う。

シューマン:歌劇「ゲノフェーファ」作品81
ジークフリート・ローレンツ(バリトン)
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
エッダ・モーザー(ソプラノ)
ペーター・シュライアー(テノール)
ジークフリート・フォーゲル(バス)ほか
クルト・マズア指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団&ベルリン放送合唱団

天才というのは得てしてその時代からははじき出される運命にある。このオペラも初演では惨憺たる結果だったよう。単なる番号オペラではない、しかも文学に造詣の深い作曲家らしく、どちらかというと劇中の演者の心理描写を中心に据えた歌劇は当時の一般大衆には到底理解できなかったのだろう。精神に以上を来しつつも「『ファウスト』からの情景」とほぼ同時進行で生み出されてゆくこの音楽には間違いなく「力」がある。(音楽家として最も脂の乗った時期に書いているのだからそれはそのはず、ますます底知れぬ魅力を感じる)

ところで、先日の講座が終わった後、D君からストーンズの映画を観たか聴かれた。そう、マーティン・スコセッシ監督によるドキュメンタリー映画「シャイン・ア・ライト」のこと。残念ながら観ていなかった。彼曰く、映画館で観たときは理由もなく涙が出て来たのだと・・・(DVD化され、家で観たときはそれほどでもなかったらしいが)。さすがに50年近く続いているバンドゆえひょっとすると「神の領域」に入っているのかな・・・。これは観なきゃ(映画館での再上映ってないのだろうか・・・)。

さて、明日は1日忘年会の続き。そして晦日に帰省。慌ただしい年末は続く・・・。


2 COMMENTS

雅之

>新国立劇場で上演されるシューマンの唯一の歌劇「ゲノフェーファ」のチケットが届いた。
ほう、いいですね!! 実演でなきゃわからないこと、いっぱいありそうですしね。羨ましいです。
私はこの歌劇、昨年出たブルーレイ・ディスクで理解を深めることにしました。
『ゲノフェーファ』全曲(日本語字幕付) クシェイ演出、アーノンクール&チューリヒ歌劇場、バンゼ、マーシー、他
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3740846
いくら音楽至上主義とはいえ、歌劇においては録音音声だけというのは、本来作曲家が意図した鑑賞のあり方ではありませんよね。
なお、アーノンクールの演奏もピリオド奏法なのでしょうが、歴史に忠実という嘘さえ主張しなければ、ひとつの立派な解釈として許容するつもりです。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
「ゲノフェーファ」、じっくり聴くと良い音楽です。本番当日を今から楽しみにしています。オペラの場合やっぱり映像を見ながらの方が理解が深まりますね。
おっしゃるように、アーノンクールはそれを一つの個性として聴く分には面白いですよね。

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