ボザール・トリオのモーツァルト三重奏曲K.542ほか(1967録音)を聴いて思ふ

大瀧詠一さんが急逝して早5年になる。
後半生はもはやアルバムを発表することはなく、ほぼ隠居生活、音楽以外の自らの好奇心の赴くまま様々な世界の研究に没頭していたという。ただ、残された作品は永遠だ。

財政逼迫の最中、少しでもお金を作ろうと数多生み出された作品群。1788年のモーツァルトは、物理的にも、また精神的にもとても忙しい。当時の本人の立場になると、それどころではないだろうが、230年後の僕たちにとってみれば、すべての作品が永遠だ。

今年は老巨匠メナヘム・プレスラーの公演が中止になった。
御年95ということもあり、少々心配ではある。昨年のサントリーホールでのリサイタルのあまりの枯れ果てた、ほとんど「白鳥の歌」を披露するかのような境地に、素晴らしい演奏であった一方で、もはやこれで最後になるのかもしれないという思いが過ったのも事実。まだまだ長生きし、これ以上望めないくらいの透明感あふれる音楽を僕たちに届けていただきたい、そんな思いでいっぱいの晦日。

ボザール・トリオ(オリジナル)が1967年にPHILIPSに録音したモーツァルトのトリオ集。生活のために書いたとはいえ、一切の悲壮感なく天衣無縫のモーツァルト。

モーツァルト:
・ピアノ三重奏曲第5番ホ長調K.542(1788)
・ピアノ三重奏曲第4番変ロ長調K.502(1786)
・ピアノ三重奏曲第7番ト長調K.564(1788)
・ピアノ三重奏曲第6番ハ長調K.548(1788)
ボザール・トリオ
メナヘム・プレスラー(ピアノ)
ダニエル・ギレ(ヴァイオリン)
バーナード・グリーンハウス(チェロ)(1967録音)

プレスラーの奏でる清楚なピアノを軸にした三位一体。グリーンハウスの深みのあるチェロの音色が素敵。あるいは、弾け、喜びに満ちるギレのヴァイオリンが美しい。

音楽が語らなければならない。演奏者は音楽の言葉を聞かなければならない。音楽で語ってほしいのです。細心の注意を払って。
(メナヘム・プレスラー)

オリジナル・ボザール・トリオのモーツァルトは、まさにこの言葉の実践だ。

 

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