1995年度カンヌ国際映画祭パルム・ドール(最高賞)受賞、エミール・クストリッツァ監督作「アンダーグラウンド」を観た。旧ユーゴスラヴィアの首都ベオグラードを舞台に第二次世界大戦以降の激動の50年間を描く超大作。
それにしても極東に住む我々にとってヨーロッパの国々で起こっていることは、ニュースや情報としては知っているものの、現実味に乏しい。学生時代、一生懸命受験のために世界史を勉強した(というより頭に詰め込んだ)知識は随分昔に記憶の彼方に追いやられているし、ヨーロッパといえども決して中心とはいえないローカルな(?)国のことは興味をもつことがなかなかない。
チトー大統領のカリスマ性によって統一体を保っていたユーゴも、大統領亡き後は終わることのない内戦に見舞われ、結局は2003年、セルビア・モンテネグロの誕生により完全にその名称も消滅してしまった(つい先年モンテネグロも独立し、結果的に連邦を形成していた旧ユーゴの国々は各々が完全に独立国家となった)。
2時間40分ほどの映画は決して短いとはいえないが、長く感じないところが不思議。時に過剰なまでのユーモアやアイロニカルな表現を交えながら、戦時下のユーゴ国民の姿を追っていく。日本は単一民族の統一国家であるゆえ、こういった「民族紛争」を目の当たりにしたことがない僕たちには「どこか遠い国で起こった出来事」のように思えるが、こういうコアな映画を観ることで世界の至る所で想像を絶する出来事が起こっていることを知り、微力ながら少しでも「世界の平和」について考えたりする時間を近しい友人たちと持てるようになることは素晴らしいことだと思う。
ユーゴスラヴィアが舞台の映画を観ていて、ふとマタチッチを聴きたくなった。
モーツァルト
「アヴェ・ヴェルム・コルプス」ニ長調K.618
交響曲第25番ト短調K.183
交響曲第40番ト短調K.550
ロヴロ・フォン・マタチッチ指揮ザグレブ・フィルハーモニー管弦楽団(1971.2.26Live)
思わずため息が出るほど魅惑的なプログラム。しかも、豪放磊落なマタチッチのイメージを覆すようなお洒落で情感たっぷりの演奏が、聴く者の心を癒してくれる。とても幸せで平和なモーツァルト!
このCDは一時期輸入盤で扱われただけなのであまり話題に上らないように思うが、ともかくモーツァルトの心の叫びを表現した凄い演奏であることを付記しておく(一音一音に込められたエネルギーをそのまま受け取るような気持ちでじっくりと聴き込むとなお一層良い)。
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