MONK SUITE KRONOS QUARTET with RON CARTER (1984)

互いに影響を与え続けてきたものの、そもそもジャズとクラシックでは語法が異なる。
より精密に作曲家の真意を再現しようとするクラシック音楽に対して、精密さよりも情感を、もっというなら作曲家の真意を仮に無視してすら演奏家の自己主張を良しとする大らかさがジャズ音楽にはある。

興味深いのは、その2つのジャンルが掛け合わされた時の奇蹟だ。
演奏家は互いの空気を読み、臨機応変に、ほとんど即興的に事を進めていくが、そこにはまた類稀な計算もあろうかと思われる。

先鋭的な現代音楽を供給してきたクロノス・カルテットとジャズ界の大御所ロン・カーターの邂逅。プロデューサーはオリン・キープニュース。組み合わされて現出する音楽の、一切の妥協を許さない、魔法のような心地良さ。

ロン・カーターは骨の髄からのジャズ・ソロイストである。彼の客演は、モンク音楽にはまことに適切なムードを維持し、かつ弦楽合奏というトータルなムードから遊離もせず、内容の濃い即興演奏的な成分を供給している。今回の録音における彼の演奏の驚くべき水準の高さは、私が思うに、ロンがどれほどこのセッションをエンジョイしているかを、また、ジャズとクラシックという二つの世界がどれほどうまく嚙み合うものであるかを、鮮やかに示している。
(オリン・キープニュース/坂口紀三和訳)
~VICJ-5004ライナーノーツ

先天の志を一つにできれば、後天はどうにでもなろう。この際、音楽のジャンルなど不問なのである。

・MONK SUITE KRONOS QUARTET with RON CARTER (1984)

Personnel
Kronos Quartet
David Harrington (first violin)
John Sherba (second violin)
Hank Dutt (viola)
Joan Jeanrenaud (cello)
And Ron Carter (bass)

Kronos Quartet with Chuck Israels (bass) ; Eddie Marshall (drums)

彼らの引き出す音楽は、一言「メロウ」。

開かれた耳を持つ若いアメリカの作曲家たちにとって、冷戦期は何よりもビバップとモダン・ジャズの時代だった。ディジー・ガレスピー、チャーリー・パーカー、セロニアウ・モンク、マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン、そしてチャールズ・ミンガスは、スウィングの形式的な殻をぶち破って登場し、弾むような自由と静かなクールさを持った音楽をつくった。バップの頂点では、電気を帯びた数群の音が、濡れた舗道に倒された送電線のようにのたうち回る。2種類の音が14歳のスティーヴ・ライヒの耳を捉えた。《春の祭典》の混乱したリズムとケニー・クラークの不意をつくようなビートである。テリー・ライリーは少年の頃にビバップを好み、のちにラグタイム・ピアノをマスターした。
アレックス・ロス著/柿沼敏江訳「20世紀を語る音楽2」(みすず書房)P500

ミニマリズムとジャズの出逢いも実に面白い。ジャズの周辺には常に革新、革命がある。

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