夜風が気持ち良い。ここのところ暑い日が続くが、今日は昼間からそこそこの風もあり、窓を全開にすると部屋があっという間に心地良い空間になる。午後読みかけの書籍を一気に読破する。リチャード・E.ルーベンスタイン著「中世の覚醒~アリストテレス再発見から知の革命へ」。宗教と科学の調和をテーマにした中世の西洋世界の精神史がアリストテレスを軸に巧妙に語られてゆく様はさながら(ちょっと前にベストセラーになった)「ダヴィンチ・コード」に負けぬほどのミステリー小説のよう。
おそらく21世紀の今になって「信仰と理性の調和」が大いなる課題になっていることの裏返しのようなものかもしれない。
歴史は面白い。過去を知れば知るほど「歴史とは繰り返すものだ」という実感が湧く。今の世の中で起こっていることは数百年前のヨーロッパで起こったことと極めて近い。中世のヨーロッパも「自然災害と社会的混乱」に対して無防備な社会に変貌しようとしていた。経済成長は不景気と停滞のうちに終わり、それとともに領主と農奴の間の衝突が激化した。爆発的な人口増加も終わり、気候までもが悪化する。そして最悪は黒死病といわれるペストの大流行。
科学一辺倒、あるいはスピリチュアル一辺倒というバランスの悪さ。時代の流れが失速すると人間はどちらかに傾く。しっかり地に足をつけ軸を定めつつも(生活を大事にしながらも)、心を感じる術を体得する余裕が重要だ。
夜、新宿のサザンタワーにてEさんのカウンセリング。最初の相談から4ヶ月が経過するが前進している。つまり心と理性のバランスがとれてきているということ。素直に自らを省みて、ひとつずつじっくりと行動を起こしていけば自ずと変化が起こる。それが良かれ悪しかれ「楽しむ」余裕も必要というもの。
モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番変ホ長調K.482
ダニエル・バレンボイム(ピアノ&指揮)
イギリス室内管弦楽団
久しぶりに聴いた。このモーツァルトの大曲はまさに「信仰と理性」のバランスがとれていて、ひょっとするとモーツァルトの最高傑作なのではと思ってしまうほどの完成度を誇っている。1785年の作曲だから、ウィーン時代の中でも最も充実していた時期のもので、彼は父レオポルトも舌を巻くほどの売れっ子になっていた。予約演奏会も盛況-つまり金銭的余裕も十分で、かつコンスタンツェとの結婚生活も順調だったのだからいうことなかったのかもしれない。
若きバレンボイムのピアノ、指揮はとにかく素晴らしい。1971年の録音だから、ちょうど当時のパートナーであったジャクリーヌ・デュ・プレが多発性硬化症を発症した頃のものである。まさに絶頂期のモーツァルトの如く(モーツァルトは1788年頃から人気に翳りが出て、貧困と家庭崩壊に喘ぐほど没落していく)公私ともども充実していた時期の神がかり的音盤である(と思う)。プライベート(結婚生活など)の安定はイコール仕事の安定につながる。
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