ブリュッヘンのバッハ「無伴奏チェロ組曲集(リコーダー版)」を聴いて思ふ

bach_brueggenそういえばフランス・ブリュッヘンが亡くなったんだった・・・。
この人の傑出した解釈に、時に疑問を抱き、時にひれ伏した。後半は類稀な指揮者として活躍したが、やっぱりリコーダー吹きのブリュッヘンが原点であり、僕は好き。

久しぶりに彼のリコーダーを聴いた。何という優しい音色。何という無垢な調べ。バッハのチェロの名作を自ら編曲した傑作。願わくば後半3曲がともに録音されていれば言うことはなかったのだが、それでもバッハの音楽の「普遍性」を教えてくれたという意味でこれ以上のものはないように僕は思う。ないものねだりは止そう。

永田仁氏によるライナーノーツより。
ブリュッヘンは、いかなる楽器においても、教養ある大人の出す音よりも、幼な子の出すシンプルな音の方がより本質的であり説得力に富むものであるという主張をもっている。また、自分の演奏スタイルは、18世紀以前の音楽理論を音楽学的方法で考証した結果決定されたものであって、個人的な好みや癖でないとも云っている。

ブリュッヘンは実験精神豊かだった。恐れるものは何もなく、ともかくすべてが挑戦だった。18世紀オーケストラとの数多の録音にもいちいち感応した。合掌・・・。

J.S.バッハ(ブリュッヘン編曲):
・無伴奏チェロ組曲第1番ト長調BWV1007
・無伴奏チェロ組曲第2番ニ短調BWV1008
・無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調BWV1009
フランス・ブリュッヘン(リコーダー)(1973.3.7&8録音)

バッハは懐が深い。そして、ブリュッヘンが言うように実にシンプルだ。
まるで当初よりリコーダーのために書かれた作品だと言って誰しも信じるだろう。悠久の音楽が、深い呼吸とともに紡がれる様を一言で表現するなら「永遠」だ。

この録音を聴いてあらためて感じた。バッハは死に直面しつつこの音楽を創造したのではないか。生の儚さと死の酷さを身に染みながら筆を執ったのではなかったか・・・。それは通常のチェロ版による演奏では決してわからないリコーダーならではの直観だ。
縦笛という原始的な楽器であるからこその「音」。

40余年前の藤沢市民会館での演奏が匂い立つ。
零れ落ちんとする色気と、内に内に秘めゆく計算が見事にバランスされる。
あまりに・・・、美しい・・・。

 

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2 COMMENTS

畑山千恵子

昨年4月、すみだトリフォニー・ホールでのブリュッヘン・プロジェクトを聴きに行きました。その時のブリュッヘンは車椅子姿で痛々しいものがありました。それでも、指揮台に座ると素晴しい音楽が流れてきました。また、ショパン・コンクールで優勝したユリアンナ・アヴデーエヴァとのショパン、ピアノ協奏曲もアブデーエヴァをしっかり支えていました。アブテーエヴァのリサイタルにも行こうと思っても、どうしようかと迷っていますね。

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岡本 浩和

>畑山千恵子様
昨年の公演はいろんなところで絶賛されていましたからね。
聴けなかったことが今となっては残念でなりません。

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