ハインリヒ・シュッツ

schutz_musikalische_exequien.jpg以前、ハイドン作曲の「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」をとりあげたことがある。僕はムーティの指揮を決して評価しないが、この楽曲に関しては十八番のようで、2種類ある音盤はどちらも名作だ。時折とりだしては聴き入る。

今日は第17回「早わかりクラシック音楽講座」であった。毎々そうだが、終了後は概ね好評。今回はソビエトの大作曲家ショスタコーヴィチをとりあげたものだから、ここ数日はショスタコ漬けで、重く暗い(笑)音楽に浸りこんでいた。しかし、そうはいってもショスタコーヴィチは天才で、音楽を聴けば聴くほどその深遠で広大な世界の虜になってしまう。
確かにソビエトという閉鎖された世界で生きざるをえなかった作曲家だけに、第一印象は極めて暗い。しかしまた一方で、おもちゃ箱をひっくり返したかのような「ひょうきんさ」も見せてくれる。実に面白い。
ただし、多少耳疲れしているのは確かで、耳に優しく(ぼーっと聴いていられるということ)、かつ心に染み入る音楽を聴きたくなり取り出したのが、「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」。それもハイドン作のものではなく、16世紀ドイツの天才作曲家、ハインリヒ・シュッツの同名作。

シュッツ:十字架上のキリストの最後の7つの言葉
ペーター・シュライヤー(テノール)
テオ・アダム(バス)
ルドルフ・マウエルスベルガー指揮ドレスデン十字架合唱団ほか

人間の声のもつ温かみ、調和というのはいかばかりのものかを堪能できる、そして「信仰心」とは何なのかを教えてくれる傑作の名盤。
シュッツの音楽は「癒し」だ。彼はJ.S.バッハ生誕のちょうど100年前に生を得、バロック初期に活躍したことは周知の通り。疲れがいっぺんに吹っ飛ぶ究極の「ヒーリング」音楽とはこのことだろう。

ところで、昨深夜にNHK-BSを観ていて、ローランド・ペンティネンというスウェーデンのピアニストの弾くクープラン作曲「神秘な防壁」という小品を耳にしていっぺんに気に入ってしまった。
ルネサンス音楽やバロック音楽は、人の心にまっすぐに突き刺さる。年代を追うごとに音楽もいわば「左脳的」になり、聴く側の頭も(耳も)疲れてしまうほどの集中力を要求するようになる。
音楽に限らず、今や人間は「原点回帰(原始回帰?)」した方がもっと楽に生きれるだろうにとふと思った・・・。

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