弦楽三重奏という佳曲

beethoven_stringtrio.jpg午前、渋谷のP社でO社長と1時間ほどミーティング。中間管理層や経営層に対しての研修について話題が及び、彼の考え方を一通り聞いた後、日頃僕が考えていることを話した。今の時代、スキルアップのための研修も重要だが、やはり土台となる「人間性」、「人間力」-究極的には「愛」という概念に近づくのだが-のブラッシュアップが重要だと思うという話をした。しかし、一方でO社長の言う「個人ではなく組織を対象にした場合、経営者は目に見えにくい精神論ではなく明らかに見える『売上を伸ばす』ための具体策の提示を求める」ということもよくわかる。そしてまた、売上が順調に推移し、右肩上がりで成長している会社の経営者は、共通してある意味非常にドライで、語弊のある言い方だが、社員を「一つの駒」と考えており、ビジネスとしての割りきりがあるというのだ(まぁ、結局はきっちりとコミュニケーションがとれているのだろうが)。そういう会社の社員は定着する。おそらくそういう経営者は「愛」がないのではなく、極めてバランスが取れているのだと思う。現実的な仕事に対する「シビアさ」(それも愛である)と、日常での温かい気持ちをもっての人間対人間の交流が時と場合に応じて使い分けできるのである。人間としての「心」あるコミュニケーションを心がける一方で、ビジネスはビジネスとして一線を引きつつ対峙する。トップが信頼に値する行動をしていれば人はついてくるものなのだ。単純な理屈だ。

ところで、音楽的には4声がもっともバランスが良いらしい。
ベートーヴェンは一連の弦楽四重奏曲(楽聖のライフワーク!)を書く以前、本当に初期の頃にだけ弦楽三重奏曲というジャンルの楽曲を4曲残している。作品3と3曲で構成される作品9である。確かに四重奏曲に比べ深みに欠けるが、ハイドンやモーツァルトに明らかに影響を受けていることがわかる青年期のベートーヴェンの鋭いパッションが感じられて意外に面白い。

ベートーヴェン:弦楽三重奏曲第4番ハ短調作品9-3
アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)
ブルーノ・ジュランナ(ヴィオラ)
ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(チェロ)

なぜベートーヴェンはこれ以降弦楽三重奏の創作を止めたのか?決して専門的に論じることはできないが、素人耳にも内声部の薄さが気になるといえば気になる。おそらく弦3本だと「音楽」を表現する上で何か物足りないのかもしれない。
とはいえ、この録音は、各楽器を代表する名士が出逢い、各々の個性を十分にぶつけ合いながらもブレンドすることで知られざる佳曲がこうも刺激的な名曲になるのかと思わせるほどの出来。僕は残念ながらこの音盤以外の演奏は耳にしたことがない。ゆえに偉そうに論じることができないが、率直に素晴らしいCDだと思う。長らく廃盤になっていたようだが、昨年ロストロが亡くなり、追悼盤で再発されているようだから未聴の方はぜひ聴いてみてください。

いよいよ明日は「愛知とし子ピアノ・リサイタル」である。夕方から天気が崩れ雨模様だが、明日の夜までには上がるようだ。良いコンサートになりますように・・・(祈)。

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