朝比奈隆指揮大阪フィル モーツァルト 「ドン・ジョヴァンニ」序曲(1973.3.23録音)ほか

今さらながら、60代の朝比奈御大の、血気盛んで、勢いのある演奏に感動する。
そこには、作曲家に対する尊敬の念が満ちる。そして、愚直に音楽に奉仕しようとする心が映される。

練習で指揮台に立つと、30秒ほど全員の顔を見ることにしています。楽員は、それほど指揮者を見ていないようでいて、見ているんですよ。一度みんなの顔を見ておくと、楽員は自分がずっと見られていると思う。むしろ自分だけが見られているように思うものなのです。演奏が違ってきます。
朝比奈隆「指揮者の仕事♯朝比奈隆の交響楽談♭」(実業之日本社)P18

音楽も間違いなくコミュニケーションだ。
音楽に血が通うかそうでないか、それは些細な日常によって支えられているのだと御大の言葉から気づかされること多々。ありがたいことである。

朝比奈隆の方法は、愚直の一言。好きこそものの上手なれという言が思い浮かぶ。

クラシック音楽をうまく聴くためには、やっぱり聴きたいという気持ちがいちばんだと思います。ほかに聴き方の上達法なんて、ないんじゃないでしょうか。
私は少年時代からそうだった。何だか、わけ分からないけど、西洋音楽を聴いてみたいとか聴きに行きたいとか。そのころに世界的な大演奏家、古いロシア時代のハイフェッツとかエルマンとか、歴史上二度と出ないような人が日本に盛んに来たんです。

~同上書P68

この、何でもない思い出話こそが朝比奈隆の音楽の源流なのである。
彼の音楽はどんな時も懐かしく、そして、生き生きとする。

朝比奈隆 大阪フィルハーモニー交響楽団名演集
・モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」K.527序曲(1973.3.23録音)
・モーツァルト:歌劇「後宮からの逃走」K.384序曲(1974.4.14録音)
・ワーグナー:ジークフリート牧歌(1974.7.29Live)
朝比奈隆指揮大阪フィルハーモニー交響楽団

この頃から、重心の低い、朝比奈隆ならではのデモーニッシュな朝比奈の「ドン・ジョヴァンニ」序曲(箕面市民会館)に感動。明朗な「後宮からの逃走」序曲(箕面市民会館)も素晴らしいが、中では、ワーグナーのジークフリート牧歌(大阪フェスティバルホール)の美しさ。後年にはない、速めのテンポで颯爽と繰り広げられる愛の音楽に身体が緩む。

この仕事は演奏技術を追求するあまり、閉鎖的な雰囲気になりがちです。指揮者は音楽以外の様々な人と出会い、社会と接する面が大きいほどいいと思っています。ダイヤモンドも、カットの多いほうが輝きを増すでしょう。
朝比奈隆「この響きの中に 私の音楽・酒・人生」(実業之日本社)P151

指揮者、音楽家に限らず、人を感化する仕事なら、それは同様。
朝比奈隆の演奏の魅力は、音楽に多くの人々の支えが感じられるところにあるのだと思う。

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