ムジカ・アンティクヮ・ケルン ビーバー 技巧的で楽しい合奏音楽(2003.11録音)

合奏の喜びが見事に刻印される。
何という躍動感、そして、何という明朗さ。
同時代の、そして、後の世の作曲家たちがこぞって影響を受けたであろう音楽の宝庫。
ハインリヒ・イグナツ・フランツ・フォン・ビーバーの7つのトリオ・パルティアの、音の隅々から、行間からさえも聴こえてくる(水の如くの)瑞々しさに感動を覚える。

晩年、イタリア人作曲家のライヴァルたちを目の当たりにして、ビーバーは決定的な作品によって再び自らの芸術的地位を定めようという気持ちになったのであろう。ちょうどバッハが1747年、テレマンのギャラント様式でさえほとんど新しいものに取って変わられていた時期に《音楽の捧げもの》—思索的で、どうしようもないほど時代遅れの―を作曲したように、ビーバーは自らの音楽的信条を詳しく説明するために、多くの部分上声部が差し障りのない3度で動くイタリア風のトリオ・ソナタだけではなく、ライヴァルであるゲオルク・ムッファト(1653-1704)に代表されるフランス様式にもよらないで、《技巧的で楽しい合奏音楽》の作曲を試みたのである。
(ラインハルト・ゲーベル/長谷川勝英訳)
PROC-1449/54ライナーノーツ

自身の集大成たる作品を上梓するに当たってのビーバーの確信と信念が間違いなくここにはある。

ハインリヒ・イグナツ・フランツ・フォン・ビーバー:技巧的で楽しい合奏音楽/調律の様々な様式
・パルティア第1番ニ短調(2つのヴァイオリンと通奏低音のための)
・パルティア第2番ロ短調(2つのヴィオリーノ・ピッコロと通奏低音のための)
・パルティア第3番イ長調(2つのヴァイオリンと通奏低音のための)
・パルティア第4番変ホ長調(ヴァイオリン、ヴィオラと通奏低音のための)
・パルティア第5番ト短調(2つのヴァイオリンと通奏低音のための)
・パルティア第6番ニ長調(2つのヴァイオリンと通奏低音のための)
・パルティア第7番ハ短調(2つのヴィオラ・ダモーレと通奏低音のための)
ムジカ・アンティクヮ・ケルン
ラインハルト・ゲーベル(ヴァイオリン、ヴィオリーノ・ピッコロ、ヴィオラ・ダモーレ)
シュテファン・シャルト(ヴァイオリン、ヴィオリーノ・ピッコロ、ヴィオラ・ダモーレ)
カールハインツ・シュテープ(ヴィオラ)
クラウス=ディーター・ブラント(チェロ)
レオン・ベルベン(チェンバロ)(2003.11.3-8&10録音)

例えば、パルティア第6番ニ長調第2楽章は、アリアと8つの変奏曲から成るが、これがまた出色。パッヘルベルのカノンを髣髴とさせる癒しの旋律に溢れ、音楽は自由に、そして開放的に鳴り響く。ちなみに、ラインハルト・ゲーベルは、30年にわたってこの7つのパルティアについて比較検討してきたそうだが、満を持して録音された演奏には、至る所に(文字通り技巧的な)愉悦の思いが刻まれるのだ。

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