シュヴァルツコップ パーソンズ グリーグ 「春」作品33-2(1968.10録音)ほか

彼女の稽古は相当厳しかったらしい。
紡ぎ出す歌からも知性豊かな、人気のある人だという印象を持っていたが、それはある側面からしか見ていなかったのかもしれないことに気づいた。時に声色を絶妙にコントロールした、変幻自在の歌に、勝手な先入観だったことを嘆く。特に、壮年期、全盛期の歌には色香あり、力が漲る。
ロマン派の歌曲を中心に収録した、エリーザベト・シュヴァルツコップのEMIボックスの1枚。冒頭の「歌の翼に」から湧き立つ慈愛、あるいは、グリーグの諸曲に見られる哀感。これほどまでに異なる種類の微妙な情感を訴えかけることができるのがシュヴァルツコップ。「春」の絶唱に僕は言葉を失くした(パーソンズの愛らしいピアノ伴奏がまた美しい)。

ゲーテによる「青春時代に」がまた美しい。
歌曲とは、作曲家が言葉を通して自身の本性を表現するようなものかもしれない。だからこそ詩人への共鳴が重要になる。言葉の重みへの共感がまた大事になる。シュヴァルツコップは、それぞれの詩に心底から感応していたようだ。

・メンデルスゾーン「歌の翼に」作品34-2(ハイネ詩)
ジェラルド・ムーア(ピアノ)(1956.4.11録音)
・シューマン:「リーダークライス」作品39(アイヒェンドルフ詩)~
―第1曲「異郷で」
―第2曲「間奏曲」
―第3曲「森のささやき」
―第4曲「静けさ」
―第8曲「異郷でII」
―第11曲「森で」
ジョフリー・パーソンズ(ピアノ)(1974.4録音)
・シューマン:「リートと歌」作品77~第5曲「ことづて」(レグリュ詩)
ジェラルド・ムーア(ピアノ)(1951.11.29録音)
「ミルテの花」作品25~第1曲「献呈」(リュッケルト詩)
ジェラルド・ムーア(ピアノ)(1965.8.22-27録音)
・リスト:「3人のジプシー」S320(レーナウ詩)
ジョフリー・パーソンズ(ピアノ)(1968.10.20-27録音)
・ブラームス:「甲斐なきセレナード」作品84-4(ドイツ民謡)
ジェラルド・ムーア(ピアノ)(1954.1.6録音)
・ブラームス:「私の眠りはますます浅くなり」作品105-2(リング詩)
・ブラームス:「調べのように私を通り抜ける」作品105-1(グロート詩)
・ブラームス:「狩人」作品95-4(ハルム詩)
・ブラームス:「愛のまこと」作品3-1(ライニック詩)
・ブラームス:「セレナード」作品106-1(クグラー詩)
ジョフリー・パーソンズ(ピアノ)(1970.8.27-31&9.1-8録音)
・イェンゼン:「つぶやくそよ風」作品21-4(ハイゼ詩)
ジェラルド・ムーア(ピアノ)(1956.4.13録音)
・マーラー:「高い知性への賛美」(「子供の魔法の角笛」第10曲)
ジョフリー・パーソンズ(ピアノ)(1966.4.21-29録音)
・グリーグ:「畑の歌」作品61-3(ビョルンセン詩)
ジェラルド・ムーア(ピアノ)(1956.4.13録音)
・グリーグ:「君を愛す」作品5-3(アンデルセン詩)
・グリーグ:「睡蓮とともに」作品25-4(イプセン詩)

・グリーグ:「春」作品33-2(ヴィンジェ詩)
ジョフリー・パーソンズ(ピアノ)(1968.10.20-27録音)
・グリーグ:「初めての出会い」作品21-1(ビョルンセン詩)
・グリーグ:「青春時代に」作品48-5(ゲーテ詩)
・グリーグ:「希望にみちて」作品26-4(ポールセン詩)
・グリーグ:「世のなりゆき」作品48-3(ウーラント詩)
ジョフリー・パーソンズ(ピアノ)(1970.8.27-31&9.1-8録音)
・ドヴォルザーク:「わが母の教えたまいし歌」作品55-5(ヘイダック詩)
ジェラルド・ムーア(ピアノ)(1956.5.19録音)
・チャイコフスキー:「ただあこがれを知る者だけが」作品6-6(ゲーテ詩)
ジェラルド・ムーア(ピアノ)(1956.4.11録音)
・ムソルグスキー:「きのこ狩り」(メイ詩)
ジョフリー・パーソンズ(ピアノ)(1967.10.24-28録音)
・メトネル:「自己欺瞞」作品15-3(ゲーテ詩)(1950.11.20録音)
・メトネル:「リラから」作品15-5(ゲーテ詩)(1950.10.16録音)
ニコライ・メトネル(ピアノ)
エリーザベト・シュヴァルツコップ(ソプラノ)

ドヴォルザークの「わが母の教えたまいし歌」の懐かしい響き。そして、チャイコフスキーの「ただあこがれを知る者だけが」にある寂寥感を実に丁寧に表現する技量。ムーアのピアノは歌の素晴らしさを一層引き立たせる好伴奏(何という哀しみ)。さらに、ムソルグスキーの「きのこ狩り」は、どちらかというとピアノが聴きもの。この抑圧からの解放の新しい響きがいかにもロシア的。最高だ。
ニコライ・メトネルの自作自演(ピアノ伴奏)の短い2つの歌曲は、いずれもゲーテの詩に曲を付したものだが、シュヴァルツコップの少女のような可憐な歌声(?)に僕は惹かれる。

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