第49回サントリー音楽賞受賞記念コンサート 児玉桃 鈴木優人指揮読売日本交響楽団

キリスト者メシアンは、心のどこかで宗教を超える森羅万象真理の存在があることがわかっていたのだと思った。カトリックへの信仰心はただならぬものだったと思われるが、それでも彼の深層には教えを超える、大宇宙を司る真の創造主の光が宿っていたのだろうと知った。

闇があっての光であり、光あってのこの世界。陰陽という宇宙の法則の体現。
揺るぎない大地に根づく木々の生命力と、大空を羽ばたく鳥たちの鳴き声と、そして、それらを大きく超える星々の煌きと。

小編成の管弦楽の澄んだ色と、個々の力量ある奏者の壮大なエネルギーが織り成す大宇宙と生命の働きの見事な同期とでもいうべき孤高の時間。静寂の音と、大爆発の音とが交互に色めき、音楽は無と有との間を往き来きする。大変な音楽だ。否、音楽というよりそれは実に偉大なる創造物であり、魂の慟哭であり、また祈りだ。アンサンブルの多少の乱れすらものともせず、指揮者は熱心に、そして無心に棒を振る。珍しい楽器群が轟く。美しい楽器群が世界を照らす。夢のような2時間だった。

第49回サントリー音楽賞受賞記念コンサート
読売日本交響楽団
2020年10月6日(火)19時開演
サントリーホール
メシアン:「峡谷から星たちへ・・・」ソロ・ピアノ、ホルン、シロリンバ、グロッケンシュピール、オーケストラのための
第1部
・第1楽章「砂漠」
・第2楽章「ムクドリモドキ科の鳥たち」
・第3楽章「星々に書かれているのは・・・」
・第4楽章「マミジロツグミヒタキ」
・第5楽章「シーダーブレイクスと畏怖の賜物」
第2部
・第6楽章「星々のあいだを翔ける呼び声」
・第7楽章「ブライスキャニオンと赤橙色の岩々」
休憩
第3部
・第8楽章「復活させられた者たちとアルデバラン星の歌」
・第9楽章「マネシツグミ」
・第10楽章「モリツグミ」
・第11楽章「ハワイツグミ、ソウシチョウ、ハワイヒタキ、シキチョウ」
・第12楽章「ザイオンパークと天の都」
児玉桃(ピアノ)
鈴木優人指揮読売日本交響楽団

第4楽章「マミジロツグミヒタキ」、第6楽章「星々のあいだを翔ける呼び声」、そして第9楽章「マネシツグミ」では、舞台の照明が極力落とされ、夜の雰囲気が演出された。やっぱり闇あっての光。何より第6楽章「星々のあいだを翔ける呼び声」における日橋辰朗のホルン・ソロに僕は痺れた。豊かで妙なる響きが朗々と、そして軽々と奏される様に僕は感動した。あるいは、第9楽章「マネシツグミ」における児玉桃の果敢なピアノ独奏に、蠢く鳥たちの生命の激しい応酬を感じた。
白眉は、第3部。中でも第8楽章「復活させられた者たちとアルデバラン星の歌」の、この世のものとは思えぬ音響のコントラストに言葉を失った。

思念は様々、そしてぐるぐると巡ったが、結局、メシアンは悟ることができなかったのだ。それでも今宵の音楽に僕はとても豊かな気持ちになった。鈴木優人のお蔭である。

※追記
帰宅後、すぐにサロネン指揮ロンドン・シンフォニエッタの音源をあらためて聴いてみたが、印象がまったく異なることに驚いた。当たり前だけれど、こういう作品はステージを観ながら聴くに限る。

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