ロストロポーヴィチ バーンスタイン指揮フランス国立管 シューマン チェロ協奏曲ほか(1976.11録音)

ロベルト・シューマンが、《少年のためのアルバム》に付録として刊行するための「音楽の座右銘」を改訂したのは、1850年頃のこと。全68条からなるそれは、音楽の分野に限らず、誰の人生にも生かすことのできる優れた銘である。

(第38条)
山の向こうにも人はいる。謙虚にしていなさい。他の人がいままでに発見・考案できなかったことを、見つけたり考えたりはしていない。もしそれができたら、天からの贈り物であると思いなさい。そして皆と分かち合わなくてはならない。

シューマンの音楽の根底にある奥床しさ(?)の原点を垣間見る。

(第56条)
作曲を始めたらすべて頭の中で行いなさい。楽器で試してみるのは最後まで曲ができあがってからである。音楽が感情にあふれ、魂から生れてくるものならば、他の人の心を打つだろう。

常識、すなわち思考の鎧を捨てよと彼はいうのである。
そして、極めつけは次だ。

(第59条)
人生の勉強もしっかりしなさい。そして他の芸術や学問にも目を向けなさい。

自身は精神疾患に悩みつつ、若者には、「心の器を大きくせよ」と贈る。
心身ともに充実し、人生の最盛期を迎えていたシューマンの、この頃生み出された作品群はいずれも傑作だ。その一つ、チェロ協奏曲。

・シューマン:チェロ協奏曲イ短調作品129
・ブロッホ:チェロと管弦楽のためのヘブライ狂詩曲「シェロモ」
ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(チェロ)
レナード・バーンスタイン指揮フランス国立管弦楽団(1976.11.11-12録音)

ロストロポーヴィチのチェロが終始静かにうなる。第1楽章「速すぎず」、そこにあるのは慈しみだ。難曲を無理なく、実に優雅に奏する様が愛おしい。同時に、バーンスタイン指揮するオーケストラは終始控えめ。ただひたすらシューマンの音楽が僕たちの心に共鳴する。続く第2楽章「ゆっくりと」の抒情。そして、第3楽章「極めて生き生きと」の文字通り生命力。ロストロポーヴィチは当時のシューマンの思念を丁寧になぞる。

一方、ソロモン王の悲劇を借りて、自らの深層を音化したエルネスト・ブロッホの名作「シェロモ」。ユダヤ民族の濃厚な血統に、バーンスタインとロストロポーヴィチが深く共感し、同期しながら演奏する様が美しい。

※「音楽の座右銘」は、藤本一子著「作曲家◎人と作品シリーズ シューマン」(音楽之友社)P110から抜粋

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