バーンスタイン指揮ボストン響 ベートーヴェン 交響曲第7番ほか(1990.8.19Live)

レナード・バーンスタインの最後の演奏会は、とても痛々しいものだったが、30余年のときを経て、今、耳だけで聴いてみると、思ったほど乱れず、むしろ「生きること」を謳歌する、希望に満ちた堂々たる演奏であったことに驚かされる。

当時の「音楽の友」での、コンサートの詳細な報告を読み、確か第3楽章プレストの途中で咳が止まらなくなり、演奏が中断されるのではないのかと危惧されるも、何とか難を乗り越えて、終演までこぎつけたというその(崩壊寸前の?)演奏は、今となっては実に神々しい。

何よりタングルウッドに集まったファンを喜ばせんと、満身創痍を押してステージに登場したバーンスタインの気概、すなわち、音楽と人を愛するという彼の本望を共に創造しようとしたボストン交響楽団メンバーの尊敬と思いのこもる演奏に頭が下がる。

・ブリテン:4つの海への間奏曲~歌劇「ピーター・グライムズ」作品33
・ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調作品92
レナード・バーンスタイン指揮ボストン交響楽団(1990.8.19Live)

ベートーヴェンの交響曲第7番イ長調作品92。
確かに第1楽章ポコ・ソステヌート冒頭から、音楽の核心には揺らぎが感じられる。しかし、この不安定な響きこそが、むしろこのドキュメントの鍵なのだ。自身の死を予感しての(?)第2楽章アレグレットは何て雄渾なのだろう。また、問題の第3楽章プレストを経て、終楽章アレグロ・コン・ブリオの(猛烈なティンパニの強奏を超え)内から湧き上がる哀感は、その瞬間のバーンスタインの思念の表出なのか、それともオーケストラの指揮者への最後の奉仕か。音楽は、時間の経過とともにわずかばかりだが、テンポを緩めてゆく。

ベートーヴェンの交響曲が終わったとき、バーンスタインは憔悴し切った状態で茫然と立ち尽くしていました。そして、これまで見たことのないくらい長く、そして温かい拍手喝采を聴衆から受けたのです。ゆっくりと、また痛々しい状態ながら観客の声援に応え、彼は舞台袖から戻ってきました。バーンスタインは弱々しい微笑みを浮かべ、祝いの祈りともとれる仕草をして、舞台を去りました。彼は、もう一つの闘争に、最後は打ち勝ったのです。
(ティム・ペイジ)

背を向け、舞台を去る最後の雄姿が、僕にはとても寂しく、そして哀しく映る。

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