ヨッフム指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管 ブルックナー 交響曲第7番ほか(1986.9.17Live)

伝家の宝刀、オイゲン・ヨッフム指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団によるブルックナーの交響曲第7番。最後の来日公演は、三軒茶屋の昭和女子大学人見記念講堂。かつてカール・ベームが最後の来日公演で披露したベートーヴェンもそう、あるいは、カルロス・クライバーがバイエルン国立管弦楽団と演奏したベートーヴェンも同じく、この(正直コンサート向けとは言えない)ホールで繰り広げられた来日演奏家の超絶名演奏は、数十年の時を経ても決して色褪せない。人見記念講堂は、特にあの頃、音楽史上の一大事を生み出すホールだったのだろうか。

真っ白なキャンバスに描かれる色彩美。
老練の棒が織り成す、ブルックナーの慈愛を見事に音化する神がかり的名演奏。
全曲は長大でありながら、時間を感じさせない集中力。音楽は特別な求心力と遠心力に満ちており、聴く者を圧倒する。特に、やはり第2楽章アダージョが、途轍もない大きさの、途方もない拡がりの、ヨッフム渾身の演奏であり、ここにはブルックナーがワーグナーに秘めた尊崇の念が大いに込められ、映し出されている。

・ブルックナー:交響曲第7番ホ長調(ノヴァーク版)
・モーツァルト:交響曲第33番変ロ長調K.319
オイゲン・ヨッフム指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(1986.9.17Live)

前プロのモーツァルトがまた素晴らしい。
遠慮がちに姿を見せる「ジュピター」主題が、何だかとても懐かしく響き、この(小さな)音楽の価値が一層高くなる、瑞々しい一世一代の名演奏なのである。

あれから35年が経過する。
短いような、長いような、時の移ろいに感嘆するも、それ以上に音楽というものが、どんなに時間を経ても新鮮さを失うものではないという、奇蹟の芸術なのだということを痛感する。音楽の完全なる再現とはこういうことをいうのだろう。

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