マティス レイノルズ シュライアー リヒター指揮ミュンヘン・バッハ管 J.S.バッハ カンタータ第23番「汝まことの神にしてダビデの子よ」(1973&74録音)ほか

バッハ時代のライプツィヒでは、平日にも、各教会がローテーションを組んで、礼拝を行っていた。これが日曜・祝日ともなると、うち続く礼拝に、一日が費やされたと言ってもよいほどである。まず、5時か5時半から、朝課。聖ニコライ、聖トーマス両教会では7時から主要礼拝が始まり、これが、10時または11時までかかった。この主要礼拝でカンタータを演奏した方の教会では、11時45分から、昼礼拝が行われる。そして、13時45分から、晩課。こうして当時のライプツィヒでは、日曜・祝日ごとに16もの説教が行われ、市民のうちには、複数の礼拝に参加する者も、少なくなかったという。
礒山雅「バッハ=魂のエヴァンゲリスト」(東京書籍)P143

クリスチャンでないものにとって教会暦なるものにはなかなか縁なく、僕も知識は乏しい。しかし、期間や時間の長さや回数はともかくとして、篤い信仰心をお礼拝という形で真摯にあらわすことについてはとてもよく理解できる。

バッハは、教会暦5年分ぐらいのレパートリーを作るまで、しばらく、カンタータの創作に専念しようと決意したようにみえる。
~同上書P145

旧トーマス学校の2階にある作曲室で、来る日も来る日も、バッハはカンタータの作曲に勤しんだという。

いよいよ春の気配を感じる。
調和する大自然の大らかさよ。
そして、争いや諍いの絶えない僕たち人間のちっぽけさよ。
教会暦では今はいわゆる復活節前に当たる。ちなみに今年の復活節は4月17日日曜日(西方教会)だ。

続く日曜日から3日間は、三大祝祭のひとつ、復活節である。この祝節がとりわけ明るく華やかに祝われるのは、長く厳しい冬のあとにようやく春が訪れることと、無縁ではないだろう。その40日後に、昇天節。そして、復活節から数えて7番目の日曜日、春たけなわの時期に、やはり三大祝節に属する、聖霊降臨節がやってくる。使徒行伝の伝える、使徒たちへの聖霊降臨を記念する祝日である。
~同上書P142-143

この2月の日曜日に僕は復活節前のカンタータを聴いた。
カール・リヒター指揮する名盤だ。

ヨハン・セバスティアン・バッハ:
・カンタータ第92番「我は神の御胸の思いに」BWV92(1973.5, 6, 10 &1974.1録音)
エディット・マティス(ソプラノ)
ペーター・シュライアー(テノール)
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バス)
・カンタータ第126番「主よ、我らを汝の御言によりて支え」BWV126(1973.5&1974.2録音)
アンナ・レイノルズ(アルト)
ペーター・シュライアー(テノール)
テオ・アダム(バス)
カンタータ第23番「汝まことの神にしてダビデの子よ」BWV23(1973.5, 10 &1974.1録音)
エディット・マティス(ソプラノ)
アンナ・レイノルズ(アルト)
ペーター・シュライアー(テノール)
カール・リヒター指揮ミュンヘン・バッハ管弦楽団&合唱団

ちなみに、第92番は復活節前第9日曜日用に書かれ1725年1月28日に初演されたもの、また、第126番は復活節前第8日曜日用に書かれ1725年2月4日に初演されたもの、そして、第23番は復活節前第7日曜日用で、1723年2月7日に初演されたものだ。

厳しさはもとより、これらのカンタータには祝祭的な、喜びの音調が湛えられる。
峻厳な響きは、そもそもバッハの勤勉さから生じた楽曲の堅牢さであり、愉悦の響きは、祝祭に向けてその箱を飛び出さんとするばかりのバッハの内なる精神の解放であろう。何よりリヒター自身がバッハに感応し、そしてイエス・キリストに拝跪する思いで指揮を執っているように思われるのだ。時代を超え、地域を超えて次代に引き継がれる人間バッハの魂の叫びよ。
個人的には第23番「汝まことの神にしてダビデの子よ」に、中でも終曲コラール「キリスト、神の小羊」に惹かれる。

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