カラヤン指揮ベルリン・フィル ホルスト 組曲「惑星」(1981.1&3録音)

宇宙の絶対的法則としての因果律。
善因善果、悪因悪果というけれど、僕たちは知らず知らずのうちに悪因たる種を蒔いているという。それこそ決して避けることのできない業というものだ。

陰陽二気の世界にあって、真理を悟ることは決して容易なことではない。古人は、過去の統計を駆使し、今を知り、未来を読み解こうとした。八卦や占星術や、理を極めればそういうものを超えるのだという。実に興味深い話だ。

グスターヴ・ホルストの組曲「惑星」。
光輝ある、研ぎ澄まされた外面を持つカラヤンの演奏は何と効果的なのだろう。

カラヤンはほとんどのオーケストラの楽員から指揮のうまさで尊敬の念をかち得てきた。彼ほどプローベを効率よく、てきぱきと行なえる指揮者は他にいない。彼はいつも明確で具体的なコンセプトをもってプローベにあらわれた。彼はまずとくにむずかしい箇所をていねいに指導し、その後全体の枠組みのなかでそれを通しで演奏させた。彼は楽員の集中力はある時間を超えると途切れてしまうのをよく知っていた。それでたいていの場合きめられた終了時間前に切り上げた。「プローベで楽員がいちばん長く感じるのは最後の15分」というわけだ。
ルーペルト・シェトレ著/喜多尾道冬訳「指揮台の神々—世紀の大指揮者列伝」(音楽之友社)P329

効果的なプローベは楽員の前向きの気持ちなくしては成功しない。だから彼は楽員たちが安心して最高度の能力を発揮できるよう、いつも気を配っていた。
~同上書P330

オーケストラを統べる術を熟知するカラヤンのマネジメント力の成果だろう。

・ホルスト:組曲「惑星」作品32(1914-16)
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1981.1&3録音)

雄渾でハードな第1曲「火星、戦争をもたらす者」は決して煩くならず、カラヤンらしい静けさ(?)を体現していて心地良い。また、第2曲「金星、平和をもたらす者」はカラヤン率いるベルリン・フィルの機能性と磨き抜かれた音質の効果抜群で極めて美しい。そして、第3曲「水星、翼のある使者」は抑制が効いており、弾け過ぎないところがまた良いと僕は思う。
一方、有名な第4曲「木星、快楽をもたらす者」は速めのテンポで颯爽と奏され、何とも勢いがある。最高なるは第5曲「土星、老いをもたらす者」の、緩徐楽章でカラヤンが示す官能の音調に思わず言葉を失う。
それにしても第6曲「天王星、魔術師」の、おそらくデュカスの「魔法使いの弟子」に影響を受けたであろう音楽も愉悦の極みであり、また勇ましい。さらに終曲「海王星、神秘主義者」の、女声合唱の加わる文字通りの神秘は、曇り硝子の向こうのぼんやりした美しさを醸成し、カラヤンならではの(消えゆく瞬間)極小の世界を形成する。名演だと僕は思う。

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