カヒーゼ指揮モスクワ放送響 ハチャトゥリアン バレエ音楽「ガイーヌ」(1957ボリショイ劇場版)(1977録音)

アラム・ハチャトゥリアン没後44年。
いかにもソヴィエト然とした音楽に、僕はどうしてもある種古臭さを覚えてしまう。
古臭さというより、民族の鬱積した歴史の結晶が音の隅々にまで刷り込まれていると表現するのが良いのかどうか。僕は同じ印象をプロコフィエフの音楽にも感じるのである。
その意味では彼らの音楽は苦手と言っていいかもしれない。

長尺のバレエ音楽「ガイーヌ」。
最終幕の「剣の舞」だけがつとに有名になっているけれど、作曲者自身は急遽追加されたシーンのために急場をしのぐ形で生み出したものゆえ、それがあまりに独り歩きし出したものだから、死ぬまで書かなきゃ良かったと後悔していたそうだ。人生とは思い通りにならないものなのである。

最初の全曲録音。

・ハチャトゥリアン:プロローグ付3幕のバレエ「ガイーヌ」(1957年ボリショイ劇場版)
ヤンスク・カヒーゼ指揮モスクワ放送交響楽団(1977録音)

濃厚な(濃厚過ぎる?)味。
ナショナリズムの真髄が見事に刻印される力強い音楽が並ぶのだが、やはり2時間超集中するのは今の僕には辛い。切れ味鋭い「剣の舞」は当然素晴らしい音楽であり、演奏なのだが、それでもあまりに有名になり過ぎた音楽ゆえか一度、二度聴けばお腹いっぱいになる。

この物語は、ソヴィエト連邦の集団農場のシンプルな話であり、国家が世界大戦に関わっていた1940年代の気持ちや感情を反映している。また、スパイを捕らえることや、弱くて最初は圧力に抵抗できない人々の物語でもある。しかしもちろん、これは集団農業の人々の最終的な勝利の物語でもあり、人々は問題を克服し、立派に自分たちの共同体を作り出し、その後いつまでも幸せに暮らすのである。
Wikipedia

音楽とは、文字通り「天人合一」の最たる芸術でありるにもかかわらず、神や信仰を否定するような、予定調和の、人為的な物語にそもそも僕は違和感を持つのだと思った(音楽外の理由だけれど)。
しかし、個人的な趣味、関心は横に置くとして、カヒーゼ指揮の本アルバムは、後世に残すべき名演奏だと思う。

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