ランチタイムコンサートVol.120 特別企画 金川真弓

さながら時間を超えた音楽の旅。
金川のヴァイオリンは芯のある音で、音楽の輪郭が実に明快で心地良い。
コレッリもプロコフィエフも、あるいはポーランドの女性作曲家バツェヴィチの音楽も、そしてまたベートーヴェンも、夢心地というより、(お昼時で)夢の中にある(?)聴衆を目覚めさせるほどの力があった。
中でも僕はベートーヴェンの音楽の力にあらためて拝跪した。
いまだ30歳の楽聖の青春の(?)歌は、隅から隅まで明るく、そして元気だ。
その頃、すでに難聴の兆しはあったであろうが、そんな不安や不満は露ほども見せず、音楽は開放的であり、美しい。その傑作を金川真弓は真摯に、そして丁寧に奏でた。インテンポかと思わせながら要所要所で情感を込め、時に緩め、時に急ぎ、音楽は悠々と躍った。

あくまで個人的にだが、アンコールで奏された(おそらく滅多にステージにはかからないであろう)リリ・ブーランジェのノクターンに打ちのめされた。何と素晴らしい、何と幻想的な、文字通り「夜想曲」であることか!
(バツェヴィチの師であるナディア・ブーランジェの妹が作曲したという紹介をヴァイオリニスト自ら慣れない(?)日本語でしてくれた。リリと聞いて僕は心の中で思わず膝を打った)
ちなみに、クレメンス・ド・グランヴァルも女性作曲家だが、ジプシー調の音楽の、堰を切ったような弾け様も、金川にかかっては至って冷静に聴こえるのだから面白い。

ランチタイムコンサートVol.120 特別企画
金川真弓
2023年2月22日(水)12:15開演
トッパンホール
・コレッリ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ第9番イ長調作品5-9
・プロコフィエフ:5つのメロディ作品35bis
・グラジナ・バツェヴィチ:ヴァイオリンとピアノのためのユモレスク(1953)
・ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調作品24「春」
~アンコール
・マリー・クレメンス・ド・グランヴァル:ボヘミエンヌ
・リリ・ブーランジェ:2つの小品よりヴァイオリンとピアノのためのノクターン(1913)
金川真弓(ヴァイオリン)
ヴィラー・ヴァルボネージ(ピアノ)

アンコール含め喜びと安寧に溢れるプログラミングの妙。時間と空間を超え、いつどんなときも音楽が人々の心を癒す芸術だということをあらためて思った。

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