バレンボイム指揮ウェスト=イースタン・ディヴァン・オーケストラ ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」ほか(2011.8Live)

ベートーヴェンの流転。
音楽に理想的な動きがあり、かつそれがまた自然体である点が実に素晴らしい。
かつてこれほどのベートーヴェンがあったかどうか。初めて聴いたとき、僕はとても感激した。よもやバレンボイムがこれほどの演奏をしようとは想像していなかった。

特に後期のベートーヴェンの思想の根底にあるものは「無常」だった。
破壊と創造を繰り返す万物の根源をインド哲学に、東洋思想に求めたのもそのためだった。

セイヤーが指摘するように、ベートーヴェンが東洋の文献に魅了されたのは、抒情的で劇的な文学もさることながら、それ以上に恐らくその宗教性にあったものと推測されるが、(筆者の見解として)その中心にあったのは“無常”精神ではなかったかと考える。現に、ベートーヴェンが1815年に、彼の数少ない相談相手であったエルデーディ伯爵夫人(1779-1837)宛に書いた書簡の中で“人間は有限な存在である”と述べている。
藤田俊之著「ベートーヴェンが読んだ本」(幻冬舎)P174

同感だ。
選りすぐりの青年たちがバレンボイムの棒を中心に類稀なる演奏を披露する様子に言葉がない。以前も書いたが、擬きが本物に転化された瞬間の神々しさ。文字通り「守破離」の成せる業だと思う。

ベートーヴェン:
・交響曲第5番ハ短調作品67
・交響曲第6番ヘ長調作品68「田園」
ダニエル・バレンボイム指揮ウェスト=イースタン・ディヴァン・オーケストラ(2011.8Live)

ケルンはフィルハーモニーでのライヴ録音。
これらの曲を初めて聴いたときのような感動を与えてくれる稀代の名演奏だと僕は思う。テンポの絶妙な伸縮、あるいはフレーズの移り変わり漸強、漸弱の見事さ、どこをどのように切り取っても生きたベートーヴェンの息遣いが聴こえるよう。

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