
シューベルトの死は早過ぎたのかどうなのか。
物理的に言えば、31年という生涯は、間違いなく早過ぎるのだけれど。
あまりに多くの未完作品を前にして、次々に湧き上がる楽想の奔流から、彼は一つの作品を丁寧に、地道に書き上げることがとにかく困難だったのだろうと推測されるが、実際のところはいかに。
シューベルトは少年時代から最晩年に至るまで、オペラを含めた劇音楽を生涯にわたって書き続けた人だ。それなのに、彼の舞台作品はほとんど忘れられた存在になってしまっている。少なくとも音楽的には実に優れた、シューベルトらしい美しいものは多々あるのに。
40分にも満たない1幕の他愛もない日常が描かれた佳作だが、18歳のシューベルトの生み出した音楽は創意に溢れ、序曲から旋律は極めて美しい。何より第一線で活躍する、錚々たる歌手たちの、リラックスどころかここぞとばかりの熱唱に言葉がない。
軍隊の見地から言えば、脱走兵は違反者だが、村人の観点からは、平和をもたらす一人の農民。世界は立場が変われば真逆の結果になるのだということを物語は諭す。
迫ってくる軍隊に捕らえられないよう、ファイトはデュバルに逃走を勧めるが、デュバルはそれを断り、4年前と同じ場所で歩哨として隊を待つ。軍隊とのすったもんだの結果は、大尉は彼を許し、妻ケイトとの生活は保障されることになり、大団円の合唱「目も眩むような素晴らしい時」。ここでの音楽の高揚も実に素晴らしい。