
モーリス・ラヴェルではないが、僕がクレメンス・クラウスのシュトラウス・ファミリーのワルツやポルカに持つ印象は「優雅さ」と「感傷性」だ。どちらかというと速めのテンポで繰り出される喜びの表現の中に垣間見える悲哀の念の巧みな表出に、彼の演奏の神髄があるのだろうと僕は思う。
ちなみに、クナッパーツブッシュに代わって登場した1953年のバイロイト音楽祭における「指環」の実況録音なども実に人間的で、神々含めた因果律の中の業力が巧みに表現されており、超名演奏のひとつだと思う(残念ながら翌年、楽旅先のメキシコで客死したためたった一度きりのバイロイト出演になったのだけれど)。
久しぶりにシュトラウス・ファミリーのワルツ&ポルカ集を聴いた。
彼の数少ない録音の中でも随一を誇るだろうシュトラウス・ファミリーのワルツやポルカは永遠だ。何て粋なのだろう。
そしてデッカの優秀録音もまた、クラウスの演奏の真価を伝えた。SPでは見過ごされがちな、さりげないセンスのよさ、過度にならない感傷、すなわち「粋」というものは、デッカのLPによってこそ、初めて聴きとれたのだ。
(山崎浩太郎)
~OPK7011ライナーノーツ
オーパス蔵による初期英国盤LPからの復刻が素晴らしい。
クレメンス・クラウス130回目の生誕日を祝して。
※2014年6月13日の記事