
坂本龍一が亡くなった。
僕が彼のことを知ったのは、高校生のときだった。
Yellow Magic Orchestraという斬新な、電気仕掛けの(?)、そしてポップな音楽は、門外漢であった当時の僕にはとても難しかった。その後、大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」は僕が上京した年に上映された。北野武やデヴィッド・ボウイなど多彩な、異色の出演者陣に驚きながらも、それは僕の前を素通りしていった。初めて意識的に聴いたのは、映画「ラストエンペラー」に感銘を受けたそのときだったと思う。彼が演じた陸軍大尉甘粕正彦の冷たい、怖い印象よりも、モダンなところを前面に押し出した役作りに僕は感化された。
(映画「ラストエンペラー」の音楽は、もともとはモリコーネに依頼される筈だったものが急遽坂本にそのお鉢が回ってきたのだという)
今年の1月に高橋幸弘が亡くなった際、意味深なTweetが有名になったけれど、それからわずか2ヶ月ちょっとで坂本も逝ってしまった。時代は確実に流れているのだと痛感する。
ところで、坂本龍一が感銘を受けたレコードの一つは、小学校時代に母から贈られたヴラド・ペルルミュテールの「ショパン・リサイタル」だったそうだ。あの録音は確かに素晴らしいものだ。坂本が絶賛する「舟歌」は、その柔らかい、自然体の、それでいて高雅な印象を与える最高室の演奏の一つだと今でも僕は思う。
手元にあるのはCD化されたものだが、アナログ・レコードのあの柔和で温かい、こ洒落た音が僕には忘れられない。坂本龍一の死に触発されて久しぶりに聴いたペルルミュテールのショパンに僕は思わず涙した。
富山駅前のホテルにて。