トスカニーニ指揮NBC響 ベートーヴェン 七重奏曲作品20(トスカニーニ編)(1951.11.26録音)

若きベートーヴェンの気概を感じさせてくれる七重奏曲(1799-1800)。
発表当時、貴族の間で持て囃されたらしい。いわばベートーヴェンの出世作の一つだといっても良かろう。主に弦楽器群を補強したトスカニーニの編曲による管弦楽団で聴くと、ベートーヴェンの意志が作品から一層強く感じられるのだから興味深い。

録音も聴きやすい。音楽の見通しは良く、トスカニーニの常なるパッションは表には表れず、柔和に、そして優しく、音楽は情感を込めて歌われる。そう、ここにはトスカニーニの「歌」がある。

ベートーヴェン:
・交響曲第5番ハ短調作品67(1939.2.27 & 3.1, 29録音)
・七重奏曲変ホ長調作品20(トスカニーニ編)(1951.11.26録音)
・劇音楽「エグモント」序曲作品84(1953.1.19録音)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮NBC交響楽団

当時のベートーヴェンの、出版社ホフマイスター宛の書簡が興味深い。
そこには、交響曲第1番やピアノ・ソナタ第11番とあわせ、この七重奏曲も売り込まれている。

では一つ説明しましょう。この場合ソナタ、七重奏曲、交響曲のあいだになんの差別もつけていないのを怪しまれるでしょう。七重奏曲や交響曲は、ソナタほど売れないのを承知しているからです。交響曲はいうまでもなくずっと値打があるのですが、こうしたのです(注意 七重奏曲は、短い導入楽節的なアダージョ、それからアレグロに、アダージョ、メヌエット、変奏を伴なうアンダンテ、メヌエット、ふたたび導入楽節的アダージョに返ってプレストとなります)。—協奏曲はたったの10ダカットと値を付けました。既に書きました通り、わたしはそれが最上の出来とは思わないからです。全部総合してみれば、高すぎるとお考えにはなるまいと信じます。できるだけ貴兄に適当な値にするのに苦心しました。
(1801年1月15日(またはその近日)付、ホフマイスター宛)
小松雄一郎編訳「新編ベートーヴェンの手紙(上)」(岩波文庫)P65

ちなみに、交響曲、七重奏曲、ピアノ・ソナタはそれぞれ20ダカットで打診されている。果たして20ダカットとは現在の価値でいくらくらいなのか?
1ダカットは4.5グルデンで、1グルデンが今の4,000円くらいの価値だそうだから、単純計算で36万円。さらに、このときベートーヴェンは4つの作品全部で70ダカットと提示しているので126万円で売却したことになる。果たして高いのか、安いのか。

何にせよ時代と地域を超え、七重奏曲は今も生きている。
永遠不滅の作品の神々しさ。トスカニーニの編曲&指揮の素晴らしさ。

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