ハンドリー指揮アルスター管 スタンフォード 交響曲第5番「『快活の人』と『沈思の人』」ほか(1987.9録音)

しばらく大英帝国の音楽漬け。
近寄り難いスノッブな音調を持つ一方で、親しみやすい旋律が随所に現れる20世紀の作品たち。
グスターヴ・ホルストの師であり、またヴォーン・ウィリアムズの師でもあったサー・チャールズ・ヴィリアーズ・スタンフォード(いわゆる保守派)。
僕は滅多に耳にしない作曲家だけれど、通俗的な音調に溢れる音楽はどれも素晴らしい。

スタンフォードはプロテスタントであり、1852年ダブリンの弁護士の家に生まれた(来年は没後100年を迎える)。
幼少より音楽の才能を認められ、1883年から1923年まで王立音楽大学の作曲科教授を務めた。彼は合唱音楽を得意とし、もちろんそれらが人気曲の一角を占めていたが、交響曲を7つ、そして6つのアイルランド狂詩曲を含む管弦楽作品を30曲以上も書いている。(ちなみに、交響曲は1876年から1911年の間に書かれ、狂詩曲は1901年から1923年の間に作曲されている)。

1887年に作曲された交響曲第3番が、ハンス・フォン・ビューローによってハンブルクとベルリンで演奏され、成功を収めたおかげで交響曲第4番がベルリンで初演されることになった。しかし続く、1894年作曲の交響曲第5番(ジョン・ミルトンの田園詩にインスピレーションを受けた、心に沁みる素晴らしい音楽)は、翌年3月に作曲者自身の指揮により初演されたが、前作ほどの成功は収めることができなかったという(十分素敵な曲だと思うけれど)。

スタンフォード:
・交響曲第5番ニ長調作品56「『快活の人』と『沈思の人』」(1894)
・アイルランド狂詩曲第4番イ短調作品141「ネイ湖の漁師と彼が見たもの」(1913)
ドナルド・デイヴィソン(オルガン)
ヴァーノン・ハンドリー指揮アルスター管弦楽団(1987.9.7-9録音)

ミルトンの詩は、現代風にいえば、「ネアカ」と「ネクラ」を対比した詩であり、シューマンの「フロレスタンとオイゼビウス」と同様の、おそらくスタンフォード自身の内なる心象風景をミルトンの詩に転化し、それを音楽として昇華したもののように僕には思われる。
しかしここには、いわゆる暗澹たる闇はない。終始一貫して明朗な、清涼な音調に支配され、音楽は聴く者の心をとらえる(癒しの第3楽章アンダンテ・モルト・トランクィロがことのほか美しい!)。そして、後半オルガンのコラールが鳴り響く終楽章アレグロ・モルトは、終始文字通り快活で(ネアカな)天国的な解放感に満ちており、感動的(A管トランペットのパッセージが合図を出すように、最後はオーケストラのトゥッティにより全曲がポリフォニックに締め括られる)。

過去記事(2016年5月29日)


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