マウリツィオ・ポリーニ ピアノ・リサイタル(2002.6.25Live)

知性に裏打ちされた強靭なテクニック。
カールハインツ・シュトックハウゼンの音楽をポリーニは絶賛する。
「この音にどんな意味があるのか、わかりますか?」と彼は問いかける。
そして、死にかけた現代音楽の行く末を嘆く。

18歳の時、マウリツィオ・ポリーニはショパン国際コンクールの覇者となった。
にもかかわらず、彼はピアニストになることを考えていなかったという。
「当時、何を考えていたのですか?」という質問に対し、恥ずかしそうに「何も考えていなかった」と彼は答える。その素顔は、一般的な日本人の10代の志向と近い。ただ、唯一違うのは、彼がショパン国際コンクールの優勝者だったという事実だ。

そしてポリーニはベートーヴェンの堅牢な構造を絶賛する。
全体観、構造をいかに読みとり、造形を確保するか、それこそベートーヴェンの真骨頂だ。
なるほど、ショパンの自由とは異なる自由がそこにはある。ショパンの自由は、自由であるがゆえに難しい。

最後の、ポリーニが「ワルトシュタイン」ソナタ終楽章のオクターヴ・グリッサンドをいとも容易く、たったまま、余裕で弾く様が素晴らしい。もちろん彼は天才だが、努力の天才であったといえる。日々研鑽を積むことありだと彼はいう。納得だ。

パリはシテ・ドゥ・ラ・ミュジークの熱狂!(アンコールが延々と続く)

シュトックハウゼンの音楽は数学で形成されているようだが、すなわちそれは宇宙そのものを形成することになる。彼の音楽が単に騒音(?)に聴こえないのはそこに存在の意味が刻み込まれているからだと思う。そして、ポリーニはその事実を、その重要性を言葉を変えて語っている。


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