モントゥー指揮サンフランシスコ響 ベートーヴェン 交響曲第2番(1949.4.13録音)

まったく誰にも、公正でないおこないは、かつて諸人の間でしたことも言ったこともなく、それが尊い国の主の道なのです。世間には、よく誰かある一人を憎み、一人を愛しむ例もあるのに、(あの方に限っては、かつて一度も非道な所業を人に対して働いたことがありません、・・・。)
(ホメロス著「オデュッセイア」第四書、690行)
藤田俊之著「ベートーヴェンが読んだ本」(幻冬舎)P147

ベートーヴェンはこの文章の下に三重線を引いているそうだから、よほど気に入ったのだろうと思われる。いかにも楽聖ベートーヴェンらしい。

未知の音楽的遺産まだまだ数多。
ピエール・モントゥー指揮サンフランシスコ響によるベートーヴェンの交響曲第2番を聴いて驚いた。若々しい、ある意味性急な音楽の作りに吃驚したのはもちろんだが、それ以上にオーケストラの、まるで地方のアマチュア楽団のような、乱れや疵をものともせず、ただただ内面の熱量だけは他を冠絶する演奏に、僕は感動した。

・ベートーヴェン:交響曲第2番ニ長調作品36
ピエール・モントゥー指揮サンフランシスコ交響楽団(1949.4.13録音)

激する第1楽章アダージョ・モルト—アレグロ・コン・ブリオ。
速めのテンポでありながら情緒を失わない第2楽章ラルゲットの歌。
そして、第3楽章スケルツォの、トスカニーニを超える灼熱。さらに、終楽章アレグロ・モルトの最後まで衰えることのない推進力!! 
すべてが「遺書」後のベートーヴェンの生きる希望を見事に音化した、真実の声のように聴こえる。技術的にはともかくも、心豊かな音楽が横溢する名演奏。

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