中庸

世の中「メガ」ブームである。マクドナルドが期間限定で販売した「メガマック」が火付け役。メガ牛丼、メガ・ハンバーグ、などなど類似の商品が続々開発され、いずれも人気を博しているという。そんな中、ウェンディーズも「スーパーメガウェンディーズ」と称するハンバーガーを発売した。おそらく一時的なブームだと思うのだが、それにしても「病んでいる」と僕は思う。とにかく異様だ。先日、吉野家のアルバイト店員が悪ふざけをして「テラ豚丼」と称する映像をネット上に載せたことが問題になった。僕などは生来大食いではないので、こういう度を越した行為はとても人間の「我欲」を象徴しているようで嫌悪感を感じてしまう。

孔子は「論語」の中で「中庸の徳たるや、それ至れるかな」と「中庸」の徳について説いた。過不足なく偏りのない、ということ。すなわち、「腹八分目、過ぎたるは及ばざるが如し」なのである。
とはいえ、孔子の説はあくまで理想論。身体をもつ人間である以上「我」や「欲」は全面否定できない。人間だから本能的な欲望は当然あって然るべきものだし、持ってなければ生きていけない。「無欲」というそんな神仏のような行動はそう簡単にとれるものではない。だから全体のバランスを常に意識することが重要だと僕は思うのである。昨日も書いたが「自然」と調和すること。「無理」をしないこと。

よくよく考えてみると、音楽の歴史も上記に通じるところがあるように思う。西洋古典音楽はベートーヴェンによってある意味完成された。では、それ以降の作曲家の創った作品は何なのか?亜流か?いや、ベートーヴェンとの闘いではなかったか、と思うのである。
例えば、交響曲というジャンルをとってみても、「第9」でやりたい放題の革新をやり遂げた楽聖以上の作品を創作することを要求され、後世の音楽家はさぞかし苦労したことだろう。ブラームスは第1交響曲を世に送り出すのに20年もの歳月と闘った。ブルックナーやマーラーは重厚長大な交響曲を書いた。色彩的にも時間的にも音楽はどんどん肥大化していった。そして、20世紀初頭のシェーンベルクによる「グレの歌」で頂点に達し、その後、音楽の形式はむしろ「より小さく」というように収束していった。いわゆる現代音楽は別扱いと考えると、その究極がヴェーベルンの音楽。大は小を兼ねるというが、やはり最小のエネルギーで最大の効果、成果を生み出すことの方が重要だ。

バルトーク:管弦楽のための協奏曲Sz.116
アンタル・ドラティ指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

アメリカに亡命以降、貧困や病気の悪化など様々な理由からうつ状態に陥り、創作意欲を完全に失くしていたバルトークに、指揮者のセルゲイ・クーセヴィツキーが委嘱した晩年の傑作。バッハのブランデンブルク協奏曲のような曲を意図して書かれたという。
バルトークはバランスを意識して作品を創作した。調性の完全な放棄を否定し、民俗音楽と西洋音楽の中庸を重視し、類稀なる名曲群を残した。また、作品の構成や和音の構成に「黄金比」を意識したり、「フィボナッチ数列」を活用したという。この管弦楽のための協奏曲(通称オケコン)も、第3楽章エレジー(悲歌)を中心としたシンメトリーの楽曲構成になっている。

※黄金比:もっとも美しいとされている比、1:1.61803。名刺の比率も黄金比。自然界にも表れ、植物の葉の並び方や巻き貝の中にも見つけることができる。

※フィボナッチ数列:1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89,・・・(どの項も、その前の2つの項の和となっている)。フィボナッチ数は自然界の現象に数多く出現する。例えば、植物の葉のつき方、ひまわりの種の並びなど。

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アレグロ・コン・ブリオ~第4章 » Blog Archive » ストラヴィンスキー再発見!

[…] ショスタコーヴィチの「レニングラード」交響曲のアメリカ初演を巡って、トスカニーニ、ストコフスキー、クーセヴィツキーの3者が初演の権利を争った話は有名な話(結局、トスカニーニ=放送初演、ストコフスキー=公開初演、クーセヴィツキー=初録音で折り合いがついたらしいが)。ショスタコーヴィチに限らず、20世紀の米露の音楽地図をひもといてみるといろいろと面白い事実が浮かび上がりそうだ。 レオポルド・ストコフスキーはショスタコーヴィチの作品の米国初演を結構な頻度で担っているが、例えば20歳ほど年長のストラヴィンスキーの場合は、作曲家本人かセルゲイ・クーセヴィツキーに依頼することが多かったよう。というよりクーセヴィツキーは20世紀の著名な作曲家に作品を委嘱し、現代音楽の普及に努めた人だから当然と言えば当然。バルトークのオケコンもそう、ラヴェル編曲の「展覧会の絵」だってそう、メシアンの「トゥーランガリラ交響曲」もそうなのだから、クーセヴィツキーあっての20世紀音楽界と言っても過言でない。 […]

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