調和って?

アマゾンや北米などでしか生息しないはずの外来魚が多摩川で相次いで見つかっているらしい。観賞用の魚をもてあまして捨てる人が増えているためだ。せっかく浄化が進み、鮎が戻ってきた川の生態系を壊すのではないかと漁に携わる人々が危機感を強めている。

下水道の整備などはもちろんのこと、人間が環境というものを意識し始め、使用する洗剤を選ぶなどの努力をした結果「清流」が回復し出した矢先のできごと。自然や環境については少しずつではあるが、人間が意識しだしたことは確かに好ましい。地球を大事にせねば、という「愛」が少しずつ浸透しているのだろう。

でも、よくよく考えると我々人間が住むこの世界も何だか同様な状況になってしまっているのではないか。日本は戦後アメリカの庇護の下に「高度経済成長」を遂げてきたことは周知の事実だ。そして、1985年の「プラザ合意」以降急速にアメリカのコントロール化に置かれ、さらには「バブル崩壊」を経て、今やM&Aなどという大義名分の下、多くの日本企業が外資に乗っ取られ、結果的に日本の経済や政治を動かしているのはいわばアメリカという外来魚にとって代わられたように見えてしまうのである。

現代は恐ろしいまでの「食」ブームである。例えば、食文化一つとってみても、世界中の味を最高のレベルで味わえるという意味では日本は随一だろう。イタリア料理、フランス料理、中華料理、インド料理、さらには純日本料理、どれをとってみても本場で食するに勝るとも劣らない完璧な味とサービス。また、昨日 NHKでも放映されていたが、金型加工の職人技についても同様。戦後60年以上をかけて、日本人は様々な分野で最善のものを提供できる体制をしっかりと確立してきたのである。

しかし、一方、上記の多摩川の生態系ではないが、日本人特有の精神が失われてしまっているように思う。僕は決して「国粋主義者」ではない。「右翼」でもない。あまりにアメリカナイズされてしまっている周辺の町並みや人々を見るにつけ何だか悲しくなってしまうのだ。川や自然を大事にするのは当然のことなのだが、日本人は自分たち自身(文化を含めいわゆる「大和魂」)をもっと大事にするべきだ。こだわるべきだと思う。

ショスタコーヴィチ:交響曲第8番ハ短調作品65
エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団(1982Live)

21世紀の今になって振り返ってみると、「共産主義」を標榜した国はことごとく潰されていった。超大国であった「ソビエト連邦」という国も「中国」も元はといえば思想的「こだわり」があったはずだ。その「こだわり」から「社会主義国家」というものが生まれたのではなかったか。スターリンや毛沢東の推進した路線が結果的に人道をはずれたところに帰着していったことが間違いの始まりであっただけで、本当は歴史の必然として現れなければならない「主義主張」だったのかもしれないとこのところ考えるのである。

ソビエト連邦を代表する大芸術家ショスタコーヴィチも粛清を怖れながらも自らの芸術に対して「こだわり」をもった音楽家であった。彼の音楽を指揮し再現するムラヴィンスキーも同じく。彼らの創り出す音楽は極限まで「純化」されている。他に染まることのない「ソ連」という国を背負った「美」が存在するのだ。特にこの第8交響曲の「叫び」は圧巻である。

そういえば、プーチン大統領が率いる「統一ロシア」が下院選で圧勝した。何だか僕には滑稽に見える。昨年の小泉前首相時の自民党の圧勝と同じ匂い、つまり、背後に「アメリカ」の匂いが見え隠れしてしまうように感じるのは僕だけだろうか。とうとうロシアもアメリカナイズされてしまったのかという「情けなさ」を先に感じてしまうのである。

「表」があり「裏」がある。「陰」があり「陽」がある。「混沌」があり「調和」がある。
語弊のある言い方だが、ひょっとすると「冷戦」という構造が世界の調和を生んでいたのではないかと考えてしまう。ソビエトの崩壊、東西ドイツの統一は果たして正しかったのだろうか。

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2 COMMENTS

neoros2019

岡本さんの5年以上前の記事にコメントします
最近ショスタコを再び聴きまくっているような状況なんで(笑)
行き過ぎた60年盤もいいんですが、それ以上にこの82年盤はやっぱり、録音の良さも手伝い、ムラヴィンスキーの悟りのような行き着いた表現の連続に打ちのめされっぱなしになります。
10番になると私はインバル/ウィーン響の過去を回顧するに際してのより暗いため息のような表現や、3楽章の盛り上げ部分が耳に快いシャキッとしたヤルヴィ/スコティッシュ国立管に心を奪われます
付け加えて、ムローヴァ/プレヴィンのヴァイオリン協1番の第1楽章の無明の闇にも心惹かれます

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岡本 浩和

>neoros2019様
こんにちは。
何だか昔の記事を読むと恥ずかしくなりますね・・・。(笑)
昨年の今頃は僕もショスタコを聴きまくっていた時期でした。2012年2月、3月頃は多分ショスタコ記事が多いはずです。10番はインバル&ウィーン響、ヤルヴィ&スコティッシュですか!!いずれも未聴なので聴いてみようと思います。
ありがとうございます。
ちなみにVn協奏曲は最近のもので庄司紗矢香のものがお気に入りです。

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