クリスティアン・マセラール指揮WDR響 バーバー 弦楽のためのアダージョ作品11(2021.2.26Live)

ごく偶に聴きたくなるのが、サミュエル・バーバーの弦楽のためのアダージョ。
オリバーストーン監督の映画「プラトーン」(1986)が公開されたとき、渋谷の映画館のオールナイト上映で僕は観た。
痺れた。

僕の推薦盤は、レナード・バーンスタインがロサンゼルス・フィルといれたドイツ・グラモフォン盤。永遠不滅の名演奏だと今も思う。

バーンスタインのコープランド、バーバーほかを聴いて思ふ バーンスタインのコープランド、バーバーほかを聴いて思ふ

しかし、それ以上に素晴らしかったのが、池袋の芸術劇場で聴いた宇宿允人指揮フロイデ・フィルのアンコールでのそれ。まさかアンコールでバーバーが聴けるとは思っていなかった僕は金縛りに遭ったかのように微動だにできなかった。あれはすごかった。

宇宿允人指揮フロイデ・フィル バーバー 弦楽のためのアダージョ(2008.5.26Live) トスカニーニ指揮NBC響 バーバー 弦楽のためのアダージョ(1942.3.19録音)ほか

コロナ禍の中、ケルナー・フィルハーモニーでの無観客ライヴ。
内燃するパッションはバーンスタインにも、またそのエネルギーはトスカニーニにも、まして宇宿にも敵わない。
しかし、この哀しい音楽が映像でもって聴けるメリットは大きい。
弦楽のためのアダージョは観て楽しむ音楽だと僕は思う。

人間は幸福に向って長い人生を歩く。大都会の雨に打たれて、大河のそばで腰を下ろして、人々は幸福を望み、幸福をめざして歩く。幸福はただちに現れないかもしれない。
だが、人はインド人のように大河のほとりに立つ。夕日が落ち、星が夜空を満たす。こうして幸福は人の歩みに沿って現れる。それは長い道だ。だが、幸福を求めるかぎり人間の道はつづく。
それをもっとも端的に表すのが物語だ、映画だ。私にとって映画とは、こうした人生に沿ってつづいてくれる長い道なのである。

「幸福までの長い距離」(1997)
「辻邦生全集19」(新潮社)P471

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