All You Need Is Love

この期に及んで「愛」などという言葉を軽く使いたくないのだが、The Beatlesの音楽が人々に希望と勇気を、そして誰しもの内にそもそもある「他への想い」というものを想起させてくれるんじゃないだろうかと思い、アルバムのいくつかを順番に聴き始めている。”Let It Be”は最右翼。White Albumをじっくり聴くのも良いかも・・・。でもこの際だから、もっと直接的なメッセージをもつ楽曲。例えば”All You Need Is Love”(邦題:「愛こそはすべて」)。フランス国歌を前奏に持つこの楽曲は、ショスタコーヴィチの引用のように、至る所に他人の作品やそれまでの自分たちの作品の旋律が木霊する。

Johnは歌う。
“Nothing you can do but you can learn how to be you in time – It’s easy.
All you need is love, all you need is love, All you need is love, love, love is all you need.”
(そんな時、君たちは何もできないけど、どうあるべきかを学ぶだろう。簡単なことさ。誰もが「愛」を欲している。愛こそがすべてなんだ。)

こういう歌詞を正面から発信してしまうと、お尻が痒くなると考えたのか、それとも自分らしくないと思ったのか・・、自らを皮肉るように徹底的に化粧を施した。そんなバージョンがあるかどうかは知らないが、ラッパやストリングスが入る前のこの音楽はすごく直接的で、今以上に心に響くものだったんじゃないかと想像する。ギター一本でJohnが歌うデモ・テープなんて存在したら卒倒しそう・・・。

陽気なThe Beatlesの後に、少ししんみりしてみようかとバーンスタイン指揮によるサミュエル・バーバーの「弦楽のためのアダージョ」(コープランドの「アパラチアの春」などとともに収録された音盤)を。涙が出そうなくらい素敵・・・。そこで思い出した。もう25年近くになる。一世を風靡した「アダージョ・カラヤン」というコンピレーション・アルバムがリリースされる5年以上前にドイツ・グラモフォンが輸入盤で密かに(?)リリースしていた「アダージョ・アルバム」。

シノーポリの棒によるマーラーの「アダージェット」に始まり、イエペス独奏の「アランフエス」第2楽章、ラヴェルの「亡き王女」(ジュリーニ&フィルハーモニア管)、バーバーの「弦楽のためのアダージョ」(バーンスタイン&ロサンゼルス・フィル)・・・ラフマニノフのヴォカリーズ(マゼール&ベルリン・フィル)・・・と続き、最後はシノーポリによるワーグナーの「ローエングリン」前奏曲で幕を下ろすという合計70分のアダージョ物語。

大震災から1週間。ニュース映像を見て思う。悲惨な状況に目をつぶりたくなる時がある一方で、身内との再会を涙して喜ぶ人たちを目の当たりにし、生きて人と交われることの大切さをあらためて知る。まだまだ警戒が必要な状況に変わりはないが、いつまでもくすぶっていても仕方がない。一瞬一瞬を一生懸命生きよう。

The Beatles:Magical Mystery Tour

2 COMMENTS

雅之

こんばんは。ご無沙汰しております。
とりあえずのところ名古屋は被災者の方々に申し訳ないくらい平和で、私とその周囲も相変わらずほぼ普通に生活しております。
音楽も普通に聴いております。

今、福島第一原発事故の動向を最も憂慮しております。
政府やマスコミの楽観的な発表は今回も信用できないようです。
http://takedanet.com/

http://takedanet.com/2011/03/11_0ba1.html
一日も早く私達の日本が安心して暮らせる国に戻ることを祈っております。

>The Beatlesの音楽が人々に希望と勇気を、そして誰しもの内にそもそもある「他への想い」というものを想起させてくれるんじゃないだろうか
同感です。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
ご無沙汰しております。東京も少しずつ落ち着いてはきております。茨城、千葉方面での余震は毎日のようにあるので、予断を許さぬ状況であることには違いないのですが。

>政府やマスコミの楽観的な発表は今回も信用できないようです。
そのようですね。極力テレビは見ておりません。ご紹介いただいたようなネットでの情報の方がはるかに信憑性が高いですね。少し勉強させていただきます。

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